ドップラー効果とは、音源と観測者が視線方向に沿って相対運動するとき、観測される周波数が変化する現象です。互いに近づくと観測周波数は高くなり、遠ざかると低くなります。
音では、救急車のサイレンが近づくと高く聞こえ、通り過ぎた後は低く聞こえる理由をこれで説明できます。光でも同じ考え方が現れ、青方偏移や赤方偏移として表れますが、光は空気中の音のモデルでは扱わないため、公式は異なります。
実際に変化するもの
変化する量は 観測周波数 です。多くの音の問題では、波の速さは媒質によって決まり、相対運動によって波の山が観測者にどれくらいの頻度で届くかが変わります。
そのため、次の3つを分けて考えると理解しやすくなります。
- 周波数: 1秒あたりに何周期届くか
- 波長: 波の山どうしの間隔
- 波の速さ: 擾乱が媒質中をどれくらいの速さで進むか
これらを混同すると、ドップラー効果の問題は必要以上に難しくなります。
音に対するドップラー効果の公式
静止した媒質中の音に対して、よく使われる1次元の形は
です。ここで:
- は発振周波数
- は観測周波数
- は媒質中の音速
- は音源に向かう観測者の速さ
- は観測者に向かう音源の速さ
この形では、符号の取り方を特定の約束に従っています。互いに近づく向きの速さを正に取ると、観測周波数は大きくなります。音源と観測者が互いに遠ざかる場合は符号が変わり、観測周波数は小さくなります。
これは媒質中を伝わる音に対する公式であり、あらゆる波にそのまま使える普遍的な公式ではありません。また、運動が音源と観測者を結ぶ直線上にあることも仮定しています。音源の速さが音速以上になると、この単純な公式は適切なモデルではなくなります。
光に対するドップラー効果の公式
光に対しては、古典的な音の公式は使えません。視線方向に沿った運動では、観測者から遠ざかる音源に対する相対論的ドップラー公式は
です。ここで
であり、 は真空中の光速です。
同じ直線上で音源が観測者に近づく場合は、係数が逆になって
となります。
したがって、遠ざかる運動では観測周波数は低くなり、これは 赤方偏移 とよばれることが多いです。近づく運動では観測周波数は高くなり、これは 青方偏移 とよばれることが多いです。
計算例: 救急車のサイレン
救急車が のサイレンを出し、静止した観測者に向かって で進んでいるとします。空気中の音速を とし、観測者は静止しているので とします。
観測者に近づく場合の音の公式を使うと、
となります。
したがって、救急車が近づいてくるとき、観測者には約 に聞こえます。
救急車が通り過ぎた後は、今度は遠ざかっています。同じ符号の約束では、
となります。
今度はサイレンは低く聞こえます。この1つの例だけで全体のパターンがわかります。近づく運動では観測周波数が上がり、遠ざかる運動では下がります。
よくある間違い
光に音の公式を使う
音の公式は、空気のような媒質があることを前提にしています。光は同じ意味で物質的な媒質を必要としないため、そのドップラーシフトは相対論的に扱う必要があります。
符号の約束が本によって違うことを忘れる
本によって、プラスとマイナスの位置が異なることがあります。安全な確認方法は物理的な意味を見ることです。近づけば観測周波数は増え、遠ざかれば減るはずです。
音では媒質の役割を無視する
音の場合、公式に入る速さは媒質に対して測ります。音源と観測者の相対速度だけを使って、空気などの媒質を無視すると、間違った結果になることがあります。
発振周波数と観測周波数を混同する
音源が出す周波数は1つです。ドップラー効果が表しているのは、相対運動があるときに特定の観測者が受け取る周波数です。
音が高くなったら波の速さが変わったと思う
通常の音のモデルでは、波の速さは依然として媒質によって決まります。変化が主に現れるのは、観測周波数と波長です。
ドップラー効果が使われる場面
ドップラー効果は日常の音で見られますが、レーダーによる速度測定、医療用超音波、天文学でも重要です。
天文学では、観測された光のずれから、視線方向の運動を推定できます。それだけで天体の運動のすべてがわかるわけではありませんが、非常に有力な手がかりになります。
似たケースを試してみる
サイレンを のままにして、救急車の速さを または に変えてみてください。通過前と通過後の観測周波数を計算し、ずれの大きさが予想どおりに変わるか確かめてみましょう。
その次に役立つ一歩として、波動方程式 と比べてみてください。そうすると、周波数・波長・波の速さを区別して考えやすくなります。