ファラデーの法則は、ループを貫く磁束が変化すると起電力が誘導されると述べます。磁場があるだけでは十分ではありません。ループを通る磁束が一定のままなら、誘導起電力は 0 です。
巻数が のコイルでは、
となります。ここで は誘導起電力、 は 1 巻あたりを貫く磁束です。マイナス符号はレンツの法則によるもので、誘導電流が磁束の変化を打ち消す向きにはたらくことを表します。
磁束とはループを通り抜ける磁場の量
磁束は、どれだけの磁場がループを通り抜けているかを表す量です。一様な磁場中にある平面ループでは、
です。ここで は磁場とループの面積ベクトルのなす角で、面積ベクトルはループ面に垂直です。この式は、磁場がループ全体で一様であり、ループを平面として扱えるときに成り立ちます。
この状況では、磁束は標準的に次の 3 通りで変化します。
- 磁場の強さ が変化する。
- ループの面積 が変化する。
- ループが回転して角度 が変化する。
これらのどれも変わらなければ、磁束は一定のままで、起電力は誘導されません。
磁束の変化が大きいほど起電力も大きい
ファラデーの法則は、変化の速さに注目する考え方です。同じ時間内に磁束が大きく変化するほど、起電力も大きくなります。同じ変化でも、より長い時間にわたって起これば、起電力は小さくなります。
そのため、磁石をコイルにゆっくり入れるより、すばやく入れたほうが、ふつうはより大きな誘導起電力が生じます。装置の細かい条件は異なっても、傾向は同じです。磁束の変化が速いほど、起電力は大きくなります。
向きを決めるのはレンツの法則
レンツの法則は、誘導される効果の向きを与えます。誘導電流は、それ自身の磁気的な効果を生み、その向きは磁束の変化を妨げる向きになります。
この表現は重要です。電流は、いつでも元の磁場そのものに逆らうわけではありません。逆らうのは磁束の変化です。ループを貫く磁束が増加しているなら、誘導電流はその増加を弱めるようにはたらきます。磁束が減少しているなら、その減少を妨げるようにはたらきます。
例題:コイルを貫く磁場が増加する場合
巻数 、面積 のコイルを考えます。一様な磁場はループ面に垂直な向きなので、 です。磁場は から まで で増加します。
磁場がループに垂直なので、1 巻あたりの磁束は です。1 巻あたりの磁束変化は
です。
平均の誘導起電力の大きさは
なので、
となります。
したがって、誘導起電力の大きさは です。
向きについては、レンツの法則を別に使って判断します。磁束は増加しているので、誘導電流はその増加を妨げる向きの磁気的効果をつくらなければなりません。
よくある間違い
磁場があるなら必ず起電力があると思う
一定のループを貫く一定の磁場は、起電力を誘導しません。必要なのは磁束の変化です。
角度を確認せずに を使う
は、磁場がループに垂直で の特別な場合だけです。一般には、条件が成り立つなら を使います。
マイナス符号をただの負の数として扱う
ファラデーの法則のマイナス符号は、主に向きを表しています。問題が起電力の大きさだけを問うなら、絶対値を使い、向きはレンツの法則で別に判断します。
巻数を忘れる
コイルでは、誘導起電力は に比例します。この因子を落とすと、答えがかなり小さくなってしまいます。
ファラデーの法則が使われる場面
ファラデーの法則は、発電機、変圧器、IH クッキングヒーター、ギターのピックアップ、多くのセンサーの原理になっています。細かな仕組みは異なっても、中心となる考え方は毎回同じです。磁束が変化すると起電力が誘導されます。
これはまた、場と回路を結びつけるわかりやすい関係でもあります。磁場の状態が変化すると起電力が生じ、閉回路であればその起電力が電流を流します。
類題に挑戦してみよう
同じコイルを使い、磁場の変化が ではなく で起こるとします。磁束変化は同じなので、誘導起電力は半分になります。
もう 1 つ試すなら、 を変える代わりに同じコイルを回転させてみましょう。同じ法則を別の角度から確かめる練習になります。