アルキメデスの原理とは、流体中に一部または全部が浸かった物体には、その物体が押しのけた流体の重さに等しい上向きの力がはたらく、というものです。この上向きの力を 浮力 といいます。多くの初学者向けの物理の問題では、次の式で浮力を計算します。
ここで、 は浮力、 は流体の密度、 は重力加速度、 は押しのけた流体の体積です。この形の式は、押しのけられた領域での流体の密度を既知とみなせて、 がほぼ一様であるときに使えます。
アルキメデスの原理が実際に教えてくれること
この原理は、すべての物体が浮く と言っているわけではありません。言っているのは、流体中にあるすべての物体には上向きの浮力がはたらく、ということです。
そのあとどうなるかは、その上向きの力と物体の重さを比べて決まります。
- 上向きの浮力
- 下向きの重力
浮力が物体の重さより大きければ、物体は浮き上がる傾向があります。小さければ、物体は沈む傾向があります。2つが等しく、ほかの力もつり合っていれば、物体は平衡を保てます。
静止して浮いている物体では、浮力は物体の重さに等しくなります。だからこそ、浮いている物体は、ちょうど十分な量の流体を押しのける深さで落ち着きます。
なぜ浮力は上向きなのか
流体の圧力は、ふつう深いほど大きくなります。そのため、流体中にある物体では、上面より下面のほうが強く押されます。
この圧力差によって、合力として上向きの力が生じます。アルキメデスの原理を使えば、表面の各部分にかかる圧力を全部足し合わせなくても、その力を手早く求められます。
計算例:水中に沈めたブロックにはたらく浮力
金属のブロックが真水の中に完全に沈んでいて、 の水を押しのけているとします。次を使います。
すると、
は
となります。
したがって、水はブロックを上向きに の浮力で押しています。
もしブロックの重さが なら、重さのほうが浮力より大きいので、沈む傾向があります。重さが なら、力がつり合うので、その流体中で平衡状態になれます。
この例が示す大事な点は、浮力は流体と押しのけた体積で決まるということです。物体が浮き上がるか沈むかは、なおその物体の重さによって決まります。
浮いている物体がちょうど必要なだけ流体を押しのける理由
物体が静止して浮いているなら、その重さは浮力に等しくなければなりません。つまり、押しのけた流体の重さが物体の重さに一致するように、ちょうど十分な量の流体を押しのけていることになります。
だから、鋼鉄そのものは水より密度が大きくても、鋼鉄の船は浮くことができます。船の形によって、船体が完全に沈む前に大きな体積の水を押しのけられるからです。
浮力の公式でよくある間違い
浮力の公式に物体の密度を使ってしまう
この公式で使うのは 流体の密度 です。物体の密度は浮くか沈むかの判断には関係しますが、 に直接入るわけではありません。
物体が一部しか沈んでいないのに全体積を使ってしまう
浮いている物体では、押しのけた体積は水中にある部分だけです。物体全体の体積を使ってよいのは、物体が完全に沈んでいるときだけです。
浮力と合力を同じものとして扱ってしまう
浮力はあくまで1つの力です。物体の運動は、浮力と重さ、さらに必要ならほかの力も比べたうえで決まる合力に依存します。
モデルの条件を忘れてしまう
学校の問題では、流体の密度を一定とみなすことが多いです。深さによって密度が大きく変わるような、より複雑な場合でも、単純な公式は圧力の考え方から導かれますが、設定をより注意深く扱う必要があります。
アルキメデスの原理はどこで使われるか
アルキメデスの原理は、船の設計、潜水艦、比重計、熱気球、そしてより広くは流体静力学で使われます。圧力、密度、平衡の関係を物理系の中で結びつける、最も手早い方法の1つです。
また、実用的な近道でもあります。押しのけた体積と流体の密度がわかれば、圧力分布全体を詳しくモデル化しなくても、物体を支える力を見積もれます。
似た浮力の問題に挑戦してみよう
押しのけた体積を のままにして、流体を水から油や海水に変えてみましょう。公式の中で変わるのは だけなので、流体の密度が上向きの力をどう変えるかがすぐにわかります。次の一歩としては、数値を変えた自分なりの問題を作って、その物体が浮き上がるか、沈むか、つり合うかを判断してみるとよいでしょう。