ラウス・フルビッツ安定判別法を使うと、特性多項式の根を直接解かなくても、右半平面にある根の個数を調べられます。制御工学では、これにより連続時間系が漸近安定かどうかをすばやく判定できます。
実係数多項式
で のとき、ラウス表を作ってその第1列を確認します。第1列に 0 が現れる場合や、ある行がすべて 0 になる場合などの特別なケースを適切に処理したあと、第1列の符号変化の回数は、実部が正の根の個数に等しくなります。符号変化がなければ、すべての根は開左半平面にあります。
ラウス・フルビッツ判別法で何を調べるのか
多くの制御問題では、安定とはすべての特性根が を満たすことを意味します。この条件は重要です。通常のラウス・フルビッツ判別法は、 平面の離散時間系ではなく、 平面の連続時間系に対するものです。
実用上の利点は速さにあります。係数だけから安定性を判定できるので、正確な根を求めるより簡単なことがよくあります。
ラウス表の作り方
まず、 の降べき順に係数を並べます。最初の 2 行には、係数を1つおきに配置します。
その後、直前の 2 行を使って下の行を計算していきます。3次多項式
では、表は次のようになります。
したがって、先頭係数が正の3次多項式が漸近安定であるための条件は
です。最後の不等式を見落とす人は少なくありません。係数がすべて正であるだけでは十分ではありません。
計算例:係数はすべて正だが不安定
次を考えます。
すべての係数が正なので、最初は安定に見えるかもしれません。しかし、ラウス表を見るとその結論が誤りだとわかります。
行を簡単にすると
となります。
ここで第1列だけを見ると
です。 から 、そして から へと、符号変化が 2 回あります。したがって、この多項式は右半平面に 2 個の根をもち、系は不安定です。
ここで押さえておきたい直感は、3次以上では、係数がすべて正でも安定とは限らないということです。
ラウス・フルビッツ判別法でよくある間違い
係数だけを見て判断する
係数がすべて正でも、それだけで系が安定とはいえません。上の計算例がまさにその反例です。
判定法の適用範囲を忘れる
通常のラウス・フルビッツ判別法は、 に関する連続時間系の特性多項式に適用します。離散時間系を扱っているなら、別の判定法が必要です。
特別なケースを無視する
第1列に 0 が現れる場合や、ある行がすべて 0 になる場合は、通常どおりに止めてよい状況ではありません。こうした場合には追加の手順が必要で、微小な摂動や補助多項式を用いることがよくあります。
多項式を正規化しない
表を作る前に、多項式を の降べき順に書き、先頭係数を正にしておくのが安全です。そうしないと、符号判定を読み違えやすくなります。
ラウス・フルビッツ判別法はいつ使うか
モデルから特性多項式が得られ、安定性をすばやく知りたいときに、ラウス・フルビッツ判別法を使います。
制御系では、極を明示的に計算しなくても閉ループ系が安定かどうかを調べられます。回路や機械系のモデルでは、パラメータの選び方によって応答が減衰するか発散するかを判定するのに役立ちます。設計では、系を安定に保つパラメータ範囲を求めるのに便利です。
正確な根を求めるのに時間がかかる場合や、そこまで必要ない場合に特に有用です。
似た安定判定を試してみよう
次の多項式でも同じ手順を試してみてください。
第1列を作って、符号変化があるかどうかを確認しましょう。そのあと、3次の場合の条件 と比べて、両方の方法が一致することを確かめてみてください。