ラプラス変換の表には、1↦1/s、eat↦1/(s−a)、sin(at)↦a/(s2+a2) のような、よく使う標準的な対応が載っています。定義積分を毎回計算し直さずに、典型的なラプラス変換の問題を素早く処理するための最短ルートです。
多くの微積分、微分方程式、工学の授業では、t≥0 に対する片側ラプラス変換を標準として使います。
L{f(t)}(s)=∫0∞e−stf(t)dt
ここで s は通常複素変数で、この式は積分が収束する範囲でのみ意味をもちます。
使い方はシンプルです。まず関数を表の行に対応させ、次に和、シフト、微分に関する少数の性質を使います。
ラプラス変換の表:よく使う対応
以下の項目は片側変換を前提にしています。収束条件はおまけではなく、答えの一部です。
| f(t) |
{L}{f(t)}(s) |
条件 |
| 1 |
1{}{s} |
{Re}(s)>0 |
| t |
1{}{s2} |
{Re}(s)>0 |
| tn |
\frac\{n!\}\{s^\{n+1\}} |
n は 0 以上の整数、{Re}(s)>0 |
| e{at} |
1{}{s−a} |
実数 a に対して、{Re}(s)>a |
| sin(at) |
a{}{s2+a2} |
実数 a に対して、{Re}(s)>0 |
| cos(at) |
s{}{s2+a2} |
実数 a に対して、{Re}(s)>0 |
| sinh(at) |
a{}{s2−a2} |
実数 a に対して、$\operatorname{Re}(s) > |
| cosh(at) |
s{}{s2−a2} |
実数 a に対して、$\operatorname{Re}(s) > |
数行しか覚えないなら、1、eat、sin(at)、cos(at) を覚えるのがおすすめです。多くの教科書の問題は、それらの行と 1 つの性質だけで処理できます。
実際によく使うラプラス変換の性質
表が強力なのは、いくつかの基本ルールと組み合わせられるからです。学生が何度も使うのは次の性質です。
線形性
変換が存在するとき、
L{af(t)+bg(t)}=aF(s)+bG(s)
が成り立ちます。
これにより、和を小さな部分に分けて扱えます。
時間領域での指数シフト
L{f(t)}=F(s) なら、
L{eatf(t)}=F(s−a)
が成り立ちます。
これは多くの表引きの土台になる性質です。t に関する指数関数を掛けると、s の式がシフトします。
微分の公式
片側変換の通常の仮定のもとで、
L{f′(t)}=sF(s)−f(0)
が成り立ちます。
このため、ラプラス変換は初期値問題にとても有用です。微分が、初期値を含む代数式に変わるからです。
t を掛ける場合
必要な領域で F(s) が微分可能なら、
L{tf(t)}=−dsdF(s)
が成り立ちます。
時間領域の関数に t が掛かっているとき、より単純な関数に帰着するのに役立ちます。
なぜラプラス変換の表が使えるのか
核 e−st は、時間領域での増大、減衰、振動を、s に関する代数式へ変換します。これは重要です。代数式のほうが、微分や積分より扱いやすいことが多いからです。
つまり、表は単なる暗記項目ではありません。パターン照合の道具です。形が見えれば、計算が 1 行で終わることもよくあります。
計算例:L{e−2tcos(3t)}
次のラプラス変換を求めます。
f(t)=e−2tcos(3t)
まず基本の表の項目として、
L{cos(3t)}=s2+9s
を使います。
次に指数シフトの性質を使います。e−2t では a=−2 なので、s を s+2 に置き換えます。
L{e−2tcos(3t)}=(s+2)2+9s+2
この変換の条件は Re(s)>−2 になります。
これで計算は終わりです。基本の対応とシフト則が分かっていれば、積分に戻る必要はありません。
ラプラス変換の表でよくあるミス
- シフト則の符号を取り違えること。eatf(t) に対する結果は F(s−a) なので、e−2tf(t) なら F(s+2) になります。
- 収束条件を無視すること。たとえば実数 a に対して、L{eat}=s−a1 には Re(s)>a が必要です。
- 微分公式の初期値を忘れること。L{f′(t)} は単に sF(s) ではありません。
- ほぼ合っているが厳密には違う表の項目を使うこと。符号やシフトの小さな違いで、答えが完全に変わることがあります。
- 片側ラプラス変換と両側ラプラス変換を混同すること。初学者向けの表の多くは、t=0 から始まる片側版を使っています。
ラプラス変換の表が役立つ場面
ラプラス変換の表は、問題が t≥0 で与えられ、初期条件が重要なときに特に有用です。
- 微分方程式では、微分を代数項に変え、初期値問題を解きやすくします。
- 回路や制御では、入力、出力、伝達関数の解析に役立ちます。
- 信号とシステムでは、減衰、振動、系の応答をコンパクトに表せます。
ここでも収束条件は重要です。必要な領域で変換が収束しないなら、表の項目だけでは十分ではありません。
逆ラプラス変換:表を逆向きに読む
同じ表は逆ラプラス変換にも使えます。たとえば
(s+2)2+9s+2
を見たら、シフトされた余弦の形だと分かるので、逆向きに読んで
e−2tcos(3t)
と判断できます。
解答例では、これが最も速い方法になることがよくあります。まずパターンを見抜き、そのあと表とシフト則で正当化します。
似た問題をやってみよう
次の変換を求めてみてください。
e4tsin(2t)
まず表の正弦の行から始めて、そのあとシフトを丁寧に適用します。さらに 1 問やるなら、e−tsin(5t) でも試して、符号によってシフトがどう変わるか比べてみてください。