逆三角関数は、三角関数の値から角度を返す関数です。実際には、arcsinx\arcsin xarccosx\arccos xarctanx\arctan x はそれぞれ、条件を満たすすべての角ではなく、主値と呼ばれる1つの標準的な角を返します。

この制限は本質的です。正弦・余弦・正接はグラフ全体では同じ値を繰り返すため、各出力がただ1つの角に対応する区間に制限してはじめて逆関数をもてます。

arcsinx\arcsin xarccosx\arccos xarctanx\arctan x の意味

次の定義は、三角関数としての関係と、許される出力範囲の両方を示しています。

arcsinx=ymeanssiny=x and π2yπ2\arcsin x = y \quad \text{means} \quad \sin y = x \text{ and } -\frac{\pi}{2} \le y \le \frac{\pi}{2} arccosx=ymeanscosy=x and 0yπ\arccos x = y \quad \text{means} \quad \cos y = x \text{ and } 0 \le y \le \pi arctanx=ymeanstany=x and π2<y<π2\arctan x = y \quad \text{means} \quad \tan y = x \text{ and } -\frac{\pi}{2} < y < \frac{\pi}{2}

これらの区間条件は、単なる補足ではありません。逆関数の値が1つに定まるようにするために必要な条件です。

実際に必要な定義域と値域

学習で最もよく使う3つの逆三角関数については、次のようになります。

arcsinx:1x1,π2yπ2\arcsin x: \quad -1 \le x \le 1, \quad -\frac{\pi}{2} \le y \le \frac{\pi}{2} arccosx:1x1,0yπ\arccos x: \quad -1 \le x \le 1, \quad 0 \le y \le \pi arctanx:xR,π2<y<π2\arctan x: \quad x \in \mathbb{R}, \quad -\frac{\pi}{2} < y < \frac{\pi}{2}

各行は、最初が入力、次が出力だと読んでください。たとえば arcsinx\arcsin x が受け取れるのは 1x1-1 \le x \le 1 の範囲だけです。これは、正弦の値がその区間の外にはならないからです。

逆三角関数のグラフの考え方

逆三角関数のグラフは、直線 y=xy = x に関する折り返しで得られます。ただし、もとの三角関数を1対1になる区間に制限したあとで考える必要があります。

たとえば y=arcsinxy = \arcsin x は、制限した正弦のグラフ

y=sinxforπ2xπ2y = \sin x \quad \text{for} \quad -\frac{\pi}{2} \le x \le \frac{\pi}{2}

を直線 y=xy = x に関して折り返したものです。

同じ考え方で、次の対応が得られます。

y=arccosxy=cosxfor0xπy = \arccos x \leftrightarrow y = \cos x \quad \text{for} \quad 0 \le x \le \pi y=arctanxy=tanxforπ2<x<π2y = \arctan x \leftrightarrow y = \tan x \quad \text{for} \quad -\frac{\pi}{2} < x < \frac{\pi}{2}

正弦・余弦・正接の周期的なグラフ全体をそのまま折り返してはいけません。グラフ全体は水平線テストを満たさないので、逆関数をもちません。

主値の範囲を使う例題

次を求めます。

arccos(12)\arccos\left(-\frac{1}{2}\right)

cosy=12\cos y = -\frac{1}{2} となる角 yy を考えます。この条件を満たす角はたくさんありますが、arccosx\arccos x が返すのは主値の範囲

0yπ0 \le y \le \pi

にある角でなければなりません。

この区間で正しい角は y=2π3y = \frac{2\pi}{3} なので、

arccos(12)=2π3\arccos\left(-\frac{1}{2}\right) = \frac{2\pi}{3}

となります。

ここで身につけたい大事な考え方は、条件を満たす角なら何でも探すのではなく、正しい範囲にある角を探すことです。

逆三角関数でよくある間違い

最も多い間違いは、逆三角関数と逆数の三角関数を混同することです。arcsinx\arcsin xcscx\csc x と同じではありません。また、sin1x\sin^{-1} x は通常、1/sinx1/\sin x ではなく逆正弦を意味します。

もう1つよくあるのは、主値の範囲を無視することです。たとえば sin(5π6)=12\sin \left(\frac{5\pi}{6}\right) = \frac{1}{2} ですが、

arcsin(12)=π6\arcsin\left(\frac{1}{2}\right) = \frac{\pi}{6}

です。これは π6\frac{\pi}{6}arcsinx\arcsin x で許される範囲にある角だからです。

また、定義域を忘れることもあります。arcsin2\arcsin 2arccos(3)\arccos(-3) のような式は実数値をもちません。正弦と余弦の出力は [1,1][-1,1] の範囲を超えないからです。

逆三角関数が使われる場面

逆三角関数は、比がわかっていて、そこから角度を求めたいときに現れます。これは直角三角形の幾何、航法、傾きや方向の問題、ベクトル成分、三角形を使うモデリングなどでよく起こります。

また、微積分でも重要です。導関数や、11+x2dx=arctanx+C\int \frac{1}{1+x^2}\,dx = \arctan x + C のような不定積分、さらに三角関数を含む置換積分でも登場します。

2ステップで考える方法

逆三角関数の式を計算するときは、次の2つを確認します。

  1. 与えられた値に対応する三角関数はどれか。
  2. その関数の主値の範囲にある角はどれか。

この2つをいつもセットで考えると、公式もグラフもずっと理解しやすくなります。

自分でも試してみよう

arcsin(22)\arcsin\left(-\frac{\sqrt{2}}{2}\right)arctan(1)\arctan(1) を求めてみましょう。先に主値の範囲を意識すると、どちらもすぐに答えが見えてきます。

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