発散定理は、閉曲面を通る外向きの総フラックスが、その曲面が囲む立体内部での発散の総和に等しいことを述べます。計算の難しい曲面積分をするべきか、それともより簡単な体積積分に置き換えられるかを判断したいとき、この定理はよく近道になります。

VFndS=VFdV.\iint_{\partial V} \mathbf{F} \cdot \mathbf{n}\, dS = \iiint_V \nabla \cdot \mathbf{F}\, dV.

ここで、VV は立体領域、V\partial V はその閉じた境界、n\mathbf{n} は外向き単位法線ベクトルです。ベクトル場 F\mathbf{F} は、VV を含む領域上で連続な1階偏導関数をもつ必要があります。これらの条件がないと、定理が成り立たなかったり、より慎重な形で述べる必要が出てきたりします。

発散定理をやさしく言うと

左辺は、ベクトル場 F\mathbf{F} が境界曲面を通ってどれだけ外へ流れ出るかを表しています。右辺は、体積の内部全体で発散を足し合わせたものです。

発散とは、ある点の近くでその場がどれだけ湧き出しや吸い込みのように振る舞うかを表す局所的な量です。つまりこの定理は、領域の内部で場が広がっていれば、その広がりが境界を横切る正味の外向き流れとして現れる、と言っています。

このため、発散定理は物理やベクトル解析でとても役立ちます。境界に関する問題を、内部に関する問題へと変換できるからです。

発散定理を使える条件

次のすべてが成り立つときに発散定理を使います。

  1. 曲面が閉じている。
  2. 向きが外向きである。
  3. ベクトル場が、その領域と境界上で連続な1階偏導関数をもつ。

曲面が開いている場合、この定理をそのまま直接使うことはできません。法線が内向きなら、答えにはマイナスが付きます。

なぜ発散定理が成り立つのか:証明の考え方

厳密な証明には少し手間がかかりますが、中心となる考え方は短く、知っておく価値があります。

立体領域をたくさんの小さな箱に分割すると考えます。それぞれの小箱では、正味の外向きフラックスは、その箱での発散に体積を掛けたものに近くなります。

小さな箱からの正味フラックス(F)ΔV.\text{小さな箱からの正味フラックス} \approx (\nabla \cdot \mathbf{F})\, \Delta V.

次に、すべての小箱についてフラックスを足し合わせます。内部の面は2つの箱で共有されているので、ある箱から出るフラックスは隣の箱に入るフラックスになります。そのため、内部の寄与は打ち消し合い、外側の境界を通るフラックスだけが残ります。

同時に、すべての箱についての (F)ΔV(\nabla \cdot \mathbf{F})\, \Delta V の和は三重積分になります。箱をどんどん小さくしていくと、この近似は厳密な等式になり、発散定理が得られます。

計算例:単位球を通るフラックス

次を考えます。

F(x,y,z)=(x,y,z),\mathbf{F}(x,y,z) = (x,y,z),

また、VV を単位球 x2+y2+z21x^2 + y^2 + z^2 \le 1 とします。その境界 V\partial V は単位球面なので、これは閉曲面であり、定理を適用できます。

まず発散を計算します。

F=xx+yy+zz=1+1+1=3.\nabla \cdot \mathbf{F} = \frac{\partial x}{\partial x} + \frac{\partial y}{\partial y} + \frac{\partial z}{\partial z} = 1 + 1 + 1 = 3.

すると、フラックスの問題は次になります。

VFndS=V3dV.\iint_{\partial V} \mathbf{F} \cdot \mathbf{n}\, dS = \iiint_V 3\, dV.

33 は定数なので、これは単に単位球の体積の 33 倍です。

V3dV=343π=4π.\iiint_V 3\, dV = 3 \cdot \frac{4}{3}\pi = 4\pi.

したがって、球面を通る外向きの総フラックスは

4π.4\pi.

です。

この例は、この定理の主な利点を示しています。球面上で直接曲面積分を計算することも可能ですが、発散が定数なので、体積積分のほうが速く求められます。

発散定理でよくあるミス

開いた曲面に使ってしまう

発散定理は閉曲面に対する定理です。円板、球面の一部、あるいは曲がったシートだけでは不十分です。

外向き法線を忘れる

標準的な定理の形では外向きの向きを使います。内向き法線を使うと、答えの符号が変わります。

発散とベクトル場そのものを混同する

ベクトル場が大きいからといって、発散も自動的に大きいとは限りません。発散は成分がどう変化するかに依存し、大きさだけでは決まりません。

領域とその境界を取り違える

曲面積分は V\partial V 上で行いますが、三重積分は VV 上で行います。これらは関係のある対象ですが、同じものではありません。

条件なしで使えると思ってしまう

この定理には正則性の仮定が必要です。初学者向けの授業では、通常、閉曲面であることと、ベクトル場がその領域上で連続な1階偏導関数をもつことを意味します。

発散定理はどこで使われるか

ベクトル解析では、この定理は難しいフラックス積分をより簡単な体積積分に置き換える標準的な方法です。

流体の流れでは、閉じた境界を通る正味の流出量と、領域内部の湧き出しや吸い込みを結び付けます。

電磁気学では、閉曲面を通るフラックスが内部に含まれるものと関係づけられる、ガウス型の法則に現れます。

より広く言えば、閉曲面を通る外向きの総フラックスを問う問題で、境界フラックスより発散のほうが積分しやすいときに有用です。

似た発散定理の問題に挑戦してみよう

同じ領域 VV を使い、ベクトル場を次のように変えてみましょう。

F(x,y,z)=(2x,2y,2z).\mathbf{F}(x,y,z) = (2x,2y,2z).

F\nabla \cdot \mathbf{F} を求め、単位球上で体積積分を計算し、それを使って球面を通る外向きの総フラックスを求めてみてください。次のステップとしては、別の閉曲面を自分で選び、まず定理の条件が成り立つかどうかを確認してみるとよいでしょう。

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