行列式の求め方は、まず正方行列かどうかを確認し、 なら 、 以上なら余因子展開で小さい行列式に分けて計算する、という流れです。最初に押さえるべき点は、行列式は正方行列にしか定義されないことです。
行列式は、ただの計算結果ではありません。 なら変換がどこかの方向につぶれていて逆行列をもちません。 なら、面積や体積の倍率をもつ変換として扱えます。
行列式とは何か
行列式は、正方行列に対応する1つの数です。線形変換の見方では、図形の面積や体積が何倍になるか、向きが反転するかを表す量として理解できます。
たとえば行列式が なら、平面や空間がどこかの方向につぶれていると考えられます。このとき逆行列は存在しません。逆に、行列式が でなければ、その変換はつぶれておらず、逆向きにたどれます。
行列式の求め方を最短でつかむ
行列なら
の行列式は
です。まずはこの形を確実に押さえるのが出発点です。
以上は余因子展開で分ける
以上では、ある行または列を選んで、小さい行列式に分解していきます。これが余因子展開です。計算を短くするなら、 が多い行や列を選ぶのが基本です。
符号は交互に変わります。左上を とすると、
の並びで見ます。ここを崩すと答えが合わなくなりやすいです。
行基本変形を使うときは「値がどう変わるか」を区別する
行基本変形でも行列式は計算できますが、どの操作でも値がそのまま保たれるわけではありません。行の入れ替えで符号が反転し、1つの行を 倍すると行列式も 倍され、ある行に別の行の定数倍を足す操作では値は変わりません。
そのため、入門段階ではまず余因子展開を確実に使えるようにし、行基本変形は「何が保存されて何が変わるか」を意識して使うのが安全です。
例題: の行列式を余因子展開で求める
次の行列の行列式を求めます。
この行列は第3列に が2つあるので、第3列で展開すると短くなります。
ここで の符号は なので、
です。したがって
よって、この行列の行列式は
です。この例のポイントは、最初から全部を力で展開しないことです。 が多い列を選ぶだけで、 の計算がほぼ の計算1回に近づきます。
行列式でよくある間違い
正方行列でないのに行列式を求めようとする
行列式は や のような行列には定義されません。まず形を見る習慣が必要です。
符号を落とす
余因子展開では、同じように見える項でも符号が交互に変わります。特に真ん中の項をうっかり正にしてしまうミスが多いです。
小行列の作り方を間違える
ある成分で展開するときは、その成分のある行と列を消して小行列を作ります。消す位置がずれると、途中式が全部別物になります。
行列式が の意味を見ない
答えが でも「たまたまそうなった」で終わらせないほうが理解が深まります。 は逆行列がないことや、変換がつぶれていることにつながります。
行列式はどんな場面で使うか
行列式は、逆行列の存在判定、連立一次方程式の扱い、線形変換の面積や体積の倍率の確認でよく出てきます。高校から大学初級の線形代数では、行列の性質を見る入口としてかなり重要です。
特に「この行列は可逆か」を素早く見たいとき、行列式はとても便利です。正方行列について、 なら逆行列が存在し、 なら存在しません。
次に自分で試す
上の例で右下の を に変えると、行列式がどう変わるかを自分で計算してみてください。余因子展開の形がそのまま使えるので、どの成分が答えに効いているかを確かめやすいです。