逆行列とは、ある行列のはたらきを打ち消す行列のことです。正方行列 に対して、逆行列は と書き、次を満たします。
ここで は単位行列です。簡単に言うと、 を掛けると、 を掛けた効果が打ち消されます。
すべての行列に逆行列があるわけではありません。行列は正方行列でなければならず、正方行列では が重要な判定条件です。
逆行列がすること
行列の積を変換だと考えてみましょう。 が座標を拡大したり、回転させたり、混ぜ合わせたりするなら、 はその変換を逆向きにたどり、元の位置に戻します。
そのため、定義には単位行列が現れます。単位行列はベクトルを変えないので、結果が になるということは、2つの行列がちょうど互いの作用を打ち消し合っているという意味です。
逆行列が存在する条件
重要なのは次の2つです。
- 行列が正方行列であること。
- 行列式が 0 でないこと。
行列では、その行列式は です。 なら、その行列は逆行列をもちません。
2x2行列の逆行列の公式
行列
に対して、逆行列が存在するのは
のときに限ります。
この条件が成り立つなら、逆行列は
です。
この公式は 行列にしか使えません。より大きい行列では、行基本変形など別の方法が必要です。
2x2行列の逆行列の例
次の行列の逆行列を求めます。
ステップ1:逆行列が存在するか確認する
行列式を計算します。
なので、この行列は可逆です。
ステップ2:2x2の公式を使う
対角成分を入れ替え、非対角成分の符号を変え、行列式で割ります。
ステップ3:掛け戻して確認する
この確認は大切です。候補となる逆行列が正しいのは、積が単位行列になる場合だけです。
逆行列を求めるときによくある間違い
- 各成分を別々に逆数にしようとすること。一般に、行列の逆行列は各成分の逆数を取って求めるものではありません。
- 存在条件の確認を忘れること。 なら、その行列に逆行列はありません。
- の公式で符号の変化を取り違えること。非対角成分は符号を変え、対角成分は入れ替えます。
- 掛け算での確認を省くこと。積が にならなければ、逆行列は間違っています。
逆行列はどこで使われるか
逆行列は、線形な操作を逆にたどりたいときに使われます。線形代数の初歩では、ふつう のような連立方程式を
と書いて解く場面で現れます。ただし、これは が可逆である場合に限ります。同じ考え方は、座標変換、線形変換、データや工学のいくつかのモデルにも現れます。
実際には、完全な逆行列を手で求める代わりに、行基本変形や数値計算で連立方程式を解くことがよくあります。それでも逆行列は、いつ解が一意に定まるのか、変換を打ち消すとはどういうことかを理解するうえで重要な概念です。
答えをすばやく確認する方法
逆行列は、元の行列の作用を打ち消せなければなりません。見た目がそれらしくても十分ではありません。最も速い確認方法は、元の行列と求めた答えを掛けることです。単位行列にならなければ、その逆行列は正しくありません。
自分でもやってみよう
次の行列の逆行列を求めてみましょう。
まず行列式を確認します。次に逆行列を計算し、掛け戻して になるか確かめてください。手計算のあとに次の一歩として、ソルバーで自分の結果を試し、最終的な成分だけでなく積も比べてみましょう。