行列は、数を行と列に並べた長方形の配列です。行列を手早く理解するには、4つの点に注目するとよいです。つまり、サイズ、よくある行列の種類、どの演算が定義されるか、そして正方行列のときに行列式が何を教えてくれるかです。
行列はデータを整理するのに使えますが、線形代数の初歩では、ベクトルを変換する規則も表します。最初から理論全体を知る必要はありません。まずは、サイズがルールを決めることを押さえれば十分です。
行列のサイズ:行と列
行列のサイズは、行数×列数で表します。たとえば、
は、行列なので 行列です。
このサイズは単なるラベルではありません。行列に何ができるか、どの演算に意味があるかを決めます。
よくある行列の種類
行列の入門問題では、よく使う種類は限られています。
行行列と列行列
行行列は、 行列のように行が1つだけの行列です。列行列は、 行列のように列が1つだけの行列です。
正方行列
正方行列は、 や のように、行数と列数が同じ行列です。行列式や逆行列は、正方行列に対してのみ定義されます。
対角行列
対角行列は正方行列で、主対角線以外の成分がすべて の行列です。重要な値がその対角線上に集まっているので、扱いやすいことが多いです。
単位行列
単位行列は、掛け算における数の に対応する行列です。 の場合は
で、 を掛けても、サイズが合う行列は変わりません。
零行列
零行列は、すべての成分が の行列です。サイズはいろいろあり、同じサイズの行列どうしの加法における の役割をします。
行列の演算:定義されるものとされないもの
加法と減法
行列の加法や減法ができるのは、サイズがまったく同じ場合だけです。計算は対応する成分どうしで行います。
サイズが異なると、その演算は定義されません。
スカラー倍
行列を1つの数で掛けることをスカラー倍といいます。このとき、すべての成分をその数で掛けます。
たとえば、
行列の積
行列の積は、別のルールに従います。 が 行列、 が 行列なら、 は定義され、その結果は 行列になります。
内側の次元が一致していなければなりません。条件は
なら定義されますが、
は、 のとき定義されません。
順序も重要です。両方の積が存在しても、 と はふつう異なります。
転置
行列の転置は、行と列を入れ替えたものです。 行列は 行列になります。
これは多くの公式で重要です。転置すると、掛け算のときの並び方が変わるからです。
行列式:何がわかるのか
行列式は、正方行列に対応する1つの数です。正方行列でない場合には定義されません。
行列
に対して、行列式は
です。
初学者の段階で最も役立つ見方は、次のとおりです。
- なら、その行列は可逆です。
- なら、その行列は可逆ではありません。
幾何学的には、 行列では は面積が何倍に拡大・縮小されるかを表します。符号は、向きが保たれるか反転するかを示します。
行列の計算例
次を考えます。
これは正方行列なので、行列式が定義されます。 を使って計算すると、
となります。
なので、この行列は可逆です。
この1つの例で、主要な考え方がつながります。
- この行列は なので正方行列です。
- 正方行列なので、行列式が定義されます。
- 行列式が でなければ、逆行列をもちます。
- 平面の変換として見ると、この行列は符号付き面積を 倍します。
これが、行列式が重要な理由です。単に計算する数ではありません。行列の構造についての情報を与えてくれます。
行列でよくあるミス
よくあるミスの1つは、サイズの違う行列を足そうとすることです。もう1つは、内側の次元を確認せずに行列の積を計算しようとすることです。
また、 だと思い込むこともよくあります。行列では、これはふつう成り立ちません。
行列式では、正方行列でないものに適用してしまうのが代表的なミスです。ほかにも、 の公式を ではなく と覚え違いすることがあります。
行列はどこで使われるか
行列は、多くの量の関係を一度に整理したい場面で現れます。初歩の授業では、連立方程式や線形変換で使われます。
さらに、コンピュータグラフィックス、データ解析、工学モデル、数値計算にも登場します。分野によって細部は異なりますが、サイズ、積、可逆性に関する基本ルールはどこでも重要です。
似た行列の問題に挑戦してみよう
小さな 行列を1つ選び、4つの問いに答えてみましょう。サイズはいくつか、正方行列か、行列式はいくつか、逆行列をもつか、です。
あとで電卓を使うとしても、計算する前に答えを予想してみてください。そうすれば、道具は理解の代わりではなく確認のために使えます。