単振動(SHM)は、物体が平衡位置へ引き戻される力を受け、その復元力が変位に比例するときに起こる運動です。これが単振動を定義する条件です。ばねにつながれた質点のような理想的な線形系では、この条件から周期が一定の正弦波的な運動が生まれます。
理想的なばねにつながれた質点では、復元力は
で表されます。マイナス符号は、力の向きが変位 と反対であることを意味します。これにニュートンの第2法則 を使うと、
となり、さらに
を得ます。これが質点-ばね系における標準的な単振動のモデルです。
何が運動を単振動にするのか
すべての往復運動が単振動とは限りません。ある運動を単振動と呼ぶには、次のすべてが成り立つ必要があります。
- 運動が平衡位置のまわりで起こること
- 復元力が平衡位置の向きを向いていること
- 復元力が、少なくともモデル化している範囲では、変位に比例すること
これらの条件のどれか1つでも満たされなければ、運動は振動していても、厳密な意味では単振動ではありません。
単振動の基本公式
質点-ばねモデルでは、角振動数は
です。周期と通常の振動数はそれぞれ
となります。変位はしばしば
と書かれます。ここで は振幅、 は初期位相です。正確に正弦を使うか余弦を使うかは、初期条件によって決まります。
なぜ単振動は繰り返すのか
質点が平衡位置から遠いほど、復元力は大きくなります。したがって、中心へ戻す加速度も大きくなります。質点が内側へ動くにつれて力は小さくなりますが、すでに中心へ向かって加速されているので速さは増していきます。
平衡位置を通り過ぎると、力の向きは反転し、質点は反対側で止まるまで減速します。その後、同じ過程が繰り返されます。これが、単振動が2つの折り返し点の間を周期的に行き来し続ける理由です。
計算例:ばね-質点系の周期
質量 の物体が、ばね定数 の理想的なばねにつながれているとします。角振動数と周期を求めましょう。
まず、角振動数を計算します。
次に、周期を計算します。
したがって、この系は 秒ごとに1回の完全な振動を行います。
この例から、何が時間スケールを決めるのかがわかります。ばねが硬いほど振動は速くなり、質量が大きいほど遅くなります。
単振動でよくある間違い
- どんな振動でも単振動だと考えてしまうこと。振動しているだけでは不十分で、復元力が変位に比例していなければなりません。
- のマイナス符号を忘れること。これがないと、力は平衡位置へ向かわず、平衡位置から遠ざかる向きになってしまいます。
- 振幅と周期を混同すること。振幅は物体が平衡位置からどれだけ離れるかを表します。周期は1回の振動にどれだけ時間がかかるかを表します。
- 振り子は常に単振動だと思い込むこと。単振り子が単振動で近似できるのは、角変位が小さい場合だけです。
単振動はどこで使われるか
単振動は、ばね、分子の振動、電気振動子、そして安定平衡の近くでの小さな振動を考えるときの標準的な出発モデルです。より複雑な系でも、平衡点の近くで線形にふるまうなら、有用な近似になります。
この条件は重要です。実際の系には減衰、外力による駆動、非線形効果などが含まれることが多く、それらの影響が無視できなくなると、運動は理想的な単振動ではなくなります。
似た単振動の問題に挑戦してみよう
例題を、同じ のばねに質量 の物体をつないだ場合に変えて、もう一度 を求めてみてください。この1つの変更だけで、周期が質量にどう依存するかがはっきりわかります。
そのあと別のケースも見たいなら、単振動を ニュートンの第2法則 と比べてみてください。単振動は、力の法則が特定の種類の運動を生み出すことを示す、最もわかりやすい例の1つです。