三角関数の公式は、ばらばらに暗記するより「どの場面で何を変形したいか」で見ると整理しやすくなります。まず押さえたいのは、sin、cos、tan の基本比、そこから出る恒等式、そして角を分けて計算する加法定理です。
よくある使い道は3つです。式を簡単にする、特別な角の値を正確に出す、三角方程式を解きやすい形に変える。この3つが見えていると、公式表も使いやすくなります。
まず覚える三角関数の基本公式
直角三角形で、角を θ、向かい側を a、となりを b、斜辺を c とすると、
sinθ=ca,cosθ=cb,tanθ=ba
また、cosθ=0 なら
tanθ=cosθsinθ
が成り立ちます。ここは後の変形で何度も使います。
相互関係と三平方の恒等式
逆数の関係は次の通りです。
cscθ=sinθ1,secθ=cosθ1,cotθ=tanθ1=sinθcosθ
さらに、最重要の恒等式は
sin2θ+cos2θ=1
です。ここから、分母が 0 でない範囲で
1+tan2θ=sec2θ
1+cot2θ=csc2θ
も導けます。tan や cot の式は、割ってよい条件があるときだけ使えます。
加法定理は exact 値の計算で強い
和や差に分けられる角では、加法定理がそのまま使えます。
sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
sin(α−β)=sinαcosβ−cosαsinβ
cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ
cos(α−β)=cosαcosβ+sinαsinβ
tan(α+β)=1−tanαtanβtanα+tanβ
tan(α−β)=1+tanαtanβtanα−tanβ
tan の公式では、分母が 0 にならないことの確認が必要です。
2倍角と半角の公式
同じ角が2つ出るときは、2倍角の公式が役立ちます。
sin(2θ)=2sinθcosθ
cos(2θ)=cos2θ−sin2θ
cos(2θ)=2cos2θ−1=1−2sin2θ
tan(2θ)=1−tan2θ2tanθ
半角では
sin(2θ)=±21−cosθ
cos(2θ)=±21+cosθ
tan(2θ)=1+cosθsinθ=sinθ1−cosθ
を使います。平方根が付く半角公式の符号は、θ/2 がどの象限にあるかで決まります。
計算例: sin75∘ を求める
75∘ は 45∘+30∘ と分けられるので、加法定理を使います。
sin75∘=sin(45∘+30∘)
=sin45∘cos30∘+cos45∘sin30∘
既知角の値を入れると、
=(22)(23)+(22)(21)
=46+42=46+2
となります。三角関数の公式が生きるのは、こうして難しい角を知っている角に分けられるときです。
間違えやすいポイント
- 恒等式と方程式を混同すること。sin2θ+cos2θ=1 は恒等式ですが、sinθ=21 は特定の角でしか成り立ちません。
- tanθ や secθ の定義域を見落とすこと。cosθ=0 のときは使えません。
- 加法定理の符号を取り違えること。特に cos(α±β) は混乱しやすいです。
- 半角公式の ± を勝手に決めること。符号は θ/2 の象限で決まります。
- 直角三角形の比だけで全部説明しようとすること。鈍角や負の角を扱うなら、単位円の見方が必要です。
どんなときに使うか
三角関数の公式は、式の簡単化、三角方程式、積分や微分の途中計算、波や回転の問題でよく使われます。高校数学では「値を求める」「式を変形する」「別の形に直す」の3場面で出会うことが多いです。
公式を選ぶときは、角を足し引きできるか、sin2 と cos2 が見えているか、同じ角が2つあるかを先に見ると判断しやすくなります。
次に自分で試す
cos15∘ を 45∘−30∘ と見て計算してみてください。途中で符号を丁寧に追えれば、加法定理の使い方がかなり安定します。