複素数とは、a+bi の形をした数のことで、a と b は実数、i2=−1 です。複素数が重要なのは、x2+1=0 のような方程式を解けるようにするだけでなく、大きさと向きをまとめて表す自然な方法にもなるからです。
要点だけを先に言うと、標準形 a+bi は加法と減法に向いており、極形式は 0 でない複素数の乗法・除法・累乗で特に便利です。
複素数とは?
z=a+bi において、a を実部、b を虚部といいます。b=0 なら z はただの実数です。a=0 で b=0 のとき、その数は純虚数と呼ばれます。
a+bi は複素平面上の点 (a,b) として考えるとわかりやすくなります。実部が水平方向の位置を表し、虚部が垂直方向の位置を表します。
実数の範囲では解をもたない方程式でも、複素数の範囲では解をもつことがあります。たとえば、
x2+1=0
は実数解をもちませんが、複素数では x=±i が解です。
複素数の加法・減法・乗法・除法
加法と減法は、実部どうし、虚部どうしをそれぞれ計算します。
(a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i
(a+bi)−(c+di)=(a−c)+(b−d)i
乗法では分配法則と i2=−1 を使います。
(a+bi)(c+di)=(ac−bd)+(ad+bc)i
除法は通常、共役複素数を使って処理します。c+di の共役複素数は c−di です。c+di=0 なら、
c+dia+bi=c2+d2(a+bi)(c−di)
となります。
共役複素数をかけると分母の虚数部分が消えるので、この方法が使えます。
複素数の極形式のしくみ
0 でない複素数 z=a+bi に対して、その絶対値は
∣z∣={a2+b2}
です。
絶対値は、複素平面上の原点から点 (a,b) までの距離を表します。
(a,b) と同じ位置を指す角を θ とすると、
z=∣z∣(cosθ+isinθ)
と書けます。
これが z の極形式です。角 θ は z の偏角と呼ばれます。
偏角は一意には決まりません。θ が成り立つなら、任意の整数 k に対して θ+2πk も成り立ちます。多くの授業では慣習として主値を 1 つ選ぶので、どの角度範囲を使うかは授業の約束を確認してください。
極形式が便利なのは、乗法にきれいな規則があるからです。0 でない複素数どうしでは、絶対値は掛け合わされ、偏角は足し合わされます。
例題:標準形と極形式で掛け算する
次を考えます。
z=1+3i
および
w=3+i
まず、標準形で掛けます。
zw=(1+3i)(3+i)
=3+i+3i+3i2
=3+4i−3=4i
次に、極形式に直します。
z=1+3i について、絶対値は
∣z∣={12+({3})2}=2
で、点 (1,3) の偏角は θ=π/3 です。したがって、
z=2(cos3π+isin3π)
となります。
w=3+i の絶対値も 2 で、点 (3,1) の偏角は π/6 です。したがって、
w=2(cos6π+isin6π)
です。
極形式どうしを掛けると、
zw=4(cos(3π+6π)+isin(3π+6π))
=4(cos2π+isin2π)=4i
となります。
どちらの方法でも同じ答えになります。極形式の利点は、小さな数でいつも計算が短くなることではなく、長さは掛け算、角度は足し算という乗法の規則が見えやすいことです。
複素数でよくあるミス
最も多いミスは、i2=−1 を忘れることです。この符号の変化によって、積の実部と虚部が正しく決まります。
もう 1 つよくあるのは、極形式で偏角を取り違えることです。基準角だけでは不十分で、正しい象限も考えなければなりません。
また、極形式のまま絶対値と偏角を足して複素数を加えようとすることもあります。しかしそれはできません。極形式が主に簡単にするのは、乗法・除法・累乗です。
もう 1 つ大事な例外として、0 の複素数は絶対値が 0 ですが、偏角は通常の意味では定義されません。そのため、極形式は主に 0 でない複素数に対して使われます。
複素数はいつ使うのか
複素数は、多項式方程式を解くとき、回転や振動を表すとき、そして工学や物理の系をモデル化するときに使われます。交流回路、信号処理、制御理論、量子力学などにも現れます。
最初は代数で学ぶことが多いですが、単なる形式的なテクニックではありません。大きさと角度の両方を含むパターンを、コンパクトに表す方法なのです。
似た問題を解いてみよう
−1+i を極形式で表してみましょう。絶対値を求め、正しい象限から偏角を選び、そのあと 2 乗して標準形に戻し、答えが合っているか確かめてみてください。