伝達関数とは、線形時不変系の入力と出力をラプラス領域で結びつける関係式です。初期条件をゼロとすると、次のように定義されます。
ここで、 は変換後の入力、 は変換後の出力です。平たく言えば、毎回微分方程式を最初から解かなくても、系がさまざまな入力にどの程度応答するかを表してくれます。
ただし、これはどんな場合でも単に「出力÷入力」になるわけではありません。この定義が使えるのは特定の条件のもとだけであり、その条件は重要です。
伝達関数でわかること
伝達関数は、系のふるまいを1つの式にまとめたものです。 がわかれば、その系が入力の一部を増幅するのか、弱めるのか、遅らせるのか、あるいはフィルタするのかを読み取れることがよくあります。
正弦波の定常応答を考えるときは、虚軸上で を評価します。すると、実用上重要な2つの情報が得られます。
- 振幅特性:角周波数 の正弦波入力がどれだけ増幅または減衰されるかを示す
- 位相特性:出力が入力に対してどれだけ位相的にずれるかを示す
このため、伝達関数は回路、振動、フィルタリング、制御などで広く使われます。
が成り立つ条件
この標準的な式は、系が線形かつ時不変であることを前提にしています。線形性が成り立たなければ、入力を重ね合わせても通常のようには出力が決まりません。時不変性が成り立たなければ、系は時刻によって異なるふるまいをするため、1つの固定された伝達関数では表せません。
また、初期条件がゼロであることも重要です。コンデンサ、インダクタ、あるいは機械振動子に蓄えられたエネルギーは実際の出力に影響しますが、その追加分は伝達関数そのものには含まれません。伝達関数は、初期条件ゼロという標準的な設定のもとでの、系に固有の入出力関係を表します。
例題:RCローパスフィルタ
抵抗 とコンデンサ を直列につなぎ、出力をコンデンサの両端で測るとします。ラプラス領域では、コンデンサのインピーダンスは なので、分圧の式から
となります。
これはローパス型の伝達関数です。低い周波数は通しやすく、高い周波数は通しにくいため、出力は入力をなめらかにしたような波形になります。
具体例として、次を選びます。
このとき
なので、伝達関数は
となります。
カットオフ角周波数は
であり、これに対応する周波数は
です。
カットオフでは、
となります。
したがって、その周波数では出力振幅は入力振幅の約 です。この1つの数値だけでも有用なことがわかります。つまり、この回路はおよそ 付近から、それ以上の信号をはっきり減衰し始めるということです。
直感を手早く確かめるなら、 のとき、 は に近いので、出力の大きさは入力とほぼ同じです。逆に、 では振幅は小さくなり、速い振動成分は強く抑えられます。
伝達関数でよくある間違い
- 線形時不変系としてモデル化していない系に対して、この用語を使ってしまう
- どの変数を入力、どの変数を出力とするかを明確にしない
- 伝達関数に任意の初期条件がすでに含まれているかのように扱う
- 一般的なラプラス領域の伝達関数 と、周波数応答 を混同する
- 物理的に位相が重要なのに、振幅だけを見て位相ずれを無視する
伝達関数はどこで使われるか
伝達関数は、系が線形微分方程式でモデル化でき、入力が出力へどう伝わるかを知りたいときに有用です。代表例としては、RC回路やRLC回路、減衰する機械振動子、フィードバック系、単純なセンサモデルなどがあります。
物理では、時間変化の全体を詳しく求めることよりも、駆動・フィルタリング・振動に対して系が周波数ごとにどう応答するかが重要な場合に、特に役立ちます。
似た伝達関数を試してみよう
同じRC回路で、今度はコンデンサではなく抵抗の両端を出力として測ってみてください。するとハイパス型の伝達関数が得られます。この比較から、重要な考え方が1つはっきりします。出力の取り方を変えると、伝達関数も変わるのです。