キルヒホッフの法則は、枝分かれやループが複数ある回路を解析するための基本ルールです。キルヒホッフの電流則(KCL)は、定常状態の回路解析では節点で電流が保存されることを表します。キルヒホッフの電圧則(KVL)は、通常の集中定数回路モデルでは、閉ループを一周したときの符号付き電圧変化の和が0になることを表します。
最短で覚えるなら、こう整理すると便利です。KCLは節点、KVLはループに使う。
KCLの意味
KCLは、枝が合流する節点で成り立ちます。
同じ内容を、次のように書くこともできます。
これは、節点に流れ込む電流を一方の符号、流れ出る電流を反対の符号に決めた場合です。
考え方はシンプルです。定常状態では、ふつうの回路の節点に電荷がたまり続けることはありません。したがって、流れ込んだ電流はそのまま流れ出なければなりません。
KVLの意味
KVLは閉ループに対して成り立ちます。
これは、出発点に戻ったとき、すべての電圧上昇が電圧降下とつり合うことを意味します。
これはエネルギー収支の考え方です。電池のような電源は単位電荷あたりのエネルギーを与え、抵抗のような回路素子はそのエネルギーを電圧降下として消費します。
ただし、条件は重要です。通常の初歩的な集中定数回路モデルでは、KVLはこの形でそのまま使えます。ループを時間変化する磁束が貫く場合には、この単純な形を使うときに追加の注意が必要です。
なぜふつうは両方の法則が必要なのか
KCLとKVLは役割が異なります。KCLは節点での電流の関係を与えます。KVLはループに沿った電圧の関係を与えます。実際の多くの問題では、これらをオームの法則のような素子の法則と組み合わせて使います。
そのため、キルヒホッフの法則の問題は、1つの公式を当てはめるというより連立方程式を解く感覚になります。法則は何が保存されるかを示し、素子の方程式は各部分がどう振る舞うかを与えます。
例題:並列回路の枝電流を求める
の電池に、 と の2つの抵抗が並列につながれているとします。 の抵抗を流れる枝電流を 、 の抵抗を流れる枝電流を とします。
抵抗は並列なので、どちらの枝も電池と同じ2つの節点の間に接続されています。つまり、各抵抗の両端の電位差はどちらも です。KVLを使うと、電池と各枝からなるループごとに電圧のつり合いを書けます。
まず、電池と の枝を含むループを考えます。
したがって、
次に、電池と の枝を含むループを使います。
したがって、
次に、電流が分かれる節点に注目します。KCLより、
したがって、電池が供給する全電流は です。また、2つの枝の抵抗値が異なるため、電流は均等ではなく分かれて流れます。
ここで覚えるべき基本パターンは次のとおりです。
- KVLは各ループのまわりの電圧のつり合いを与える。
- KCLは節点で電流がどう分かれ、どう合流するかを与える。
よくあるミス
符号規約を混同する
最初に電流の向きとループの向きを決めます。その後は一貫して使い続けます。求めた電流が負になった場合、たいていは実際の電流の向きが仮定と逆だったことを意味します。
素子の方程式を使わず、キルヒホッフの法則だけで解こうとする
KCLとKVLだけで問題が完結することはあまりありません。ふつうは抵抗に対する のような関係式がまだ必要です。
閉ループでない経路にKVLを書く
KVLはループに対する法則です。出発点に戻っていないなら、正しく適用していることにはなりません。
単純なKVLの形が成り立つ条件を忘れる
通常の回路の演習問題では、ふつうの形で十分うまく使えます。しかし、時間変化する磁束がある、より高度な電磁気の状況では、この単純なループ則を無条件に使ってはいけません。
キルヒホッフの法則はいつ使うのか
キルヒホッフの法則は、回路に複数の枝や複数のループがあるとき、あるいは近道の公式だけでは未知数が多すぎるときに使われます。これは節点電位法、メッシュ電流法、多くの抵抗回路網の問題の土台になります。
回路シミュレーションソフトが自動で解いてくれる場合でも、その内部では同じ保存則の考え方が使われているのが普通です。
まずKCLとKVLのどちらを使うべきか見分けるには
問題が、電流がどう分かれるか、どう合流するかに関するものなら、まず節点でKCLを考えます。
問題が、回路内のある経路に沿った電圧上昇や電圧降下に関するものなら、まずループに対してKVLを考えます。
回路に値のわかっている抵抗が含まれているなら、両方の法則をオームの法則と組み合わせて使うことを想定しましょう。
類題に挑戦してみよう
例題を、同じ2つの抵抗を使った の電池の場合に変えてみましょう。まず各枝の電流を求め、その後で分岐する節点においてKCLを使って全電流を確認してみてください。