ストークスの定理は、閉曲線に沿う線積分が、その曲線を境界にもつ任意の向きづけられた曲面を通る ×F\nabla \times \mathbf{F} の流束に等しいことを述べます。ただし、ベクトル場が十分になめらかで、向きが正しく対応している必要があります。ひとつだけ覚えるなら、境界に沿う循環と、曲面を通る回転は同じものを別の見方で測っている、という点です。

向きづけられた曲面 SS 上の、十分になめらかなベクトル場 F\mathbf{F} と、その正の向きをもつ境界 S\partial S に対して、

SFdr=S(×F)ndS.\oint_{\partial S} \mathbf{F} \cdot d\mathbf{r} = \iint_S (\nabla \times \mathbf{F}) \cdot \mathbf{n}\, dS.

これが定理の正式な形です。左辺は境界に沿った循環を表します。右辺は曲面を通る回転の流束を表します。

直感:循環と回転は同じことを語っている

ストークスの定理の本当の価値は、計算しやすい積分に切り替えられることです。境界曲線のパラメータ表示が簡単なら、線積分のほうがよい方法になります。回転が簡単で曲面も扱いやすいなら、面積分のほうが速く求まります。

大事な直感は、局所的な回転です。回転はベクトル場がその場でどれだけ回ろうとするかを表し、境界積分は外周全体での正味の循環を表します。ストークスの定理は、曲面と境界の向きが正しく対応していれば、この二つの見方が一致することを示しています。

まず確認すべき条件

ストークスの定理は、どんな図にもそのまま当てはめられる公式ではありません。向きづけられた曲面、境界曲線、そしてその曲面上およびその周辺で十分になめらかなベクトル場が必要です。

学生が最も見落としやすいのは向きの条件です。曲面上の法線ベクトル n\mathbf{n} を選ぶと、境界の向きは右手の法則によって決まります。法線が上向きなら、上から見たときの正の向きは反時計回りです。

法線を反転すると、面積分の符号が変わります。境界の向きを反転すると、線積分の符号が変わります。どちらか一方だけを反転すると、最終結果の符号が間違います。

単位円板での計算例

ベクトル場

F(x,y,z)=(y,x,0).\mathbf{F}(x,y,z) = (-y,x,0).

を考えます。

SS を平面 z=0z=0 上の単位円板 x2+y21x^2 + y^2 \le 1 とし、上向きに向きづけます。その境界 S\partial S は、反時計回りに向いた単位円です。

ここでは面積分の側から始めるほうが短く済みます。まず回転を計算します。

×F=(0yxz,(y)z0x,xx(y)y)=(0,0,2).\nabla \times \mathbf{F} = \left( \frac{\partial 0}{\partial y} - \frac{\partial x}{\partial z}, \frac{\partial (-y)}{\partial z} - \frac{\partial 0}{\partial x}, \frac{\partial x}{\partial x} - \frac{\partial (-y)}{\partial y} \right) = (0,0,2).

単位法線が n=(0,0,1)\mathbf{n} = (0,0,1) なので、

(×F)n=2.(\nabla \times \mathbf{F}) \cdot \mathbf{n} = 2.

したがって、面積分は

S(×F)ndS=S2dS=2area(S)=2π.\iint_S (\nabla \times \mathbf{F}) \cdot \mathbf{n}\, dS = \iint_S 2\, dS = 2 \cdot \text{area}(S) = 2\pi.

となります。

次に、線積分を直接確かめます。単位円の標準的なパラメータ表示は

r(t)=(cost,sint,0),0t2π.\mathbf{r}(t) = (\cos t,\sin t,0), \qquad 0 \le t \le 2\pi.

です。

このとき

r(t)=(sint,cost,0)\mathbf{r}'(t) = (-\sin t,\cos t,0)

であり、

F(r(t))=(sint,cost,0).\mathbf{F}(\mathbf{r}(t)) = (-\sin t,\cos t,0).

したがって、

F(r(t))r(t)=1,\mathbf{F}(\mathbf{r}(t)) \cdot \mathbf{r}'(t) = 1,

なので

SFdr=02π1dt=2π.\oint_{\partial S} \mathbf{F} \cdot d\mathbf{r} = \int_0^{2\pi} 1\, dt = 2\pi.

両辺は一致します。

SFdr=S(×F)ndS=2π.\oint_{\partial S} \mathbf{F} \cdot d\mathbf{r} = \iint_S (\nabla \times \mathbf{F}) \cdot \mathbf{n}\, dS = 2\pi.

この例は、幾何が単純で、ベクトル場が原点のまわりに明確に回転しているので覚えておく価値があります。この定理は、その回転を、円周を一周して測る方法でも、円板を通る回転として測る方法でも同じように捉えます。

ストークスの定理でよくあるミス

  1. 選んだ法線に対して、境界の向きを対応させるのを忘れる。
  2. 与えられた曲線を境界にもたない曲面にストークスの定理を使う。
  3. なめらかさの仮定を確認せず、どんなベクトル場にも成り立つと思ってしまう。
  4. F\mathbf{F} の流束と ×F\nabla \times \mathbf{F} の流束を混同する。ストークスの定理で使うのは元の場ではなく回転です。
  5. 平面の曲面にしか使えないと思い込む。通常の正則性条件が成り立てば、曲がった曲面にも使えます。

ストークスの定理が役立つ場面

ベクトル解析では、二つの積分のうち片方がもう片方よりずっと簡単なときに、ストークスの定理が役立ちます。流体力学では、閉曲線まわりの循環と、曲面を通る渦度を結びつけます。電磁気学では、マクスウェル方程式の積分形と微分形を行き来するときに現れます。

実用的な方針としても便利です。境界が単純なら線積分を使い、回転が簡単で曲面も扱いやすいなら、代わりに面積分を使います。

コンパクトな覚え方

ストークスの定理は、循環と回転をつなぐ橋だと考えるとよいです。

境界に沿う循環=曲面を通る回転の総量.\text{境界に沿う循環} = \text{曲面を通る回転の総量}.

これは完全に厳密な定理の形ではありませんが、最初に使うときのイメージとしては正しい捉え方です。

類題に挑戦

同じ単位円板を使い、ベクトル場を

F(x,y,z)=(2y,2x,0).\mathbf{F}(x,y,z) = (-2y,2x,0).

に変えてみてください。まず回転を計算し、ストークスの定理を使ってから、境界積分を直接確かめます。幾何はそのままなので、ベクトル場を変えると答えがどう変わるかに集中できます。

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