理想気体と実在気体の違いは、結局のところひとつの問いに集約されます。つまり、PV=nRTPV = nRT はいつ良い近似になるのか、ということです。理想気体とは、粒子の体積を無視でき、衝突時を除いて分子間力が働かないとするモデルです。実在気体は実際の気体なので、分子は有限の大きさをもち、互いに引き合ったり反発したりします。

だからこそ、

PV=nRTPV = nRT

がよく成り立つのは、適切な条件のもとに限られます。一般に、気体は比較的低圧・高温ほど理想気体に近く振る舞います。このとき分子同士の間隔が大きく、凝縮もしにくいからです。

理想気体と実在気体:本質的な違い

理想気体モデルでは、現実の気体にある2つの複雑さを取り除いています。

1つ目は、気体粒子が容器の体積に比べてほとんど場所を取らないとみなすことです。2つ目は、完全弾性衝突を除いて分子間の引力や斥力を無視することです。

これらの仮定によって、計算はとても簡単になります。実際の分子に対して厳密に正しいわけではありませんが、化学の初学段階や日常的な多くの気体計算では十分よい近似になります。

実在気体が理想気体の状態方程式からずれる理由

実在気体がずれるのは、分子が点ではなく、しかも相互作用するからです。

引力が無視できないと、分子同士が引き合うため、容器の壁にやや弱く衝突するようになります。そのような条件では、同じ nnVVTT に対して、実測圧力は理想気体の予測より低くなることがあります。

一方で、気体を十分強く圧縮すると、分子の有限な大きさの影響がより重要になります。すると、気体は理想モデルの予想よりも圧縮されにくくなることがあります。どちらの効果が支配的かは気体の種類や条件によって異なるため、ずれの向きは常に同じとは限りません。

圧縮係数を使った1つの計算例

理想性を確かめる実用的な方法として、圧縮係数があります。

Z=PVnRTZ = \frac{PV}{nRT}

理想気体では、Z=1Z = 1 です。実在気体では、ZZ11 より大きいことも小さいこともあります。

たとえば、1.00 mol1.00\ \mathrm{mol} の気体を 300 K300\ \mathrm{K}1.00 L1.00\ \mathrm{L} の容器に入れ、圧力を測定したところ 24.0 atm24.0\ \mathrm{atm} だったとします。

もしその気体が理想気体なら、圧力は

Pideal=nRTV=(1.00)(0.0821)(300)1.0024.6 atmP_{\text{ideal}} = \frac{nRT}{V} = \frac{(1.00)(0.0821)(300)}{1.00} \approx 24.6\ \mathrm{atm}

となります。

次に、実測状態を理想的な振る舞いと比較します。

Z=(24.0)(1.00)(1.00)(0.0821)(300)0.97Z = \frac{(24.0)(1.00)}{(1.00)(0.0821)(300)} \approx 0.97

Z<1Z < 1 なので、この試料はこの条件で理想的な振る舞いからわずかに負のずれを示しています。これは通常、引力のために圧力が理想気体の予測より少し低くなっていることを意味します。

理想気体と実在気体を比べるときによくある間違い

理想気体の状態方程式は実在気体には役に立たないと思うこと

理想気体の状態方程式はモデルであって、あらゆる気体・あらゆる条件で厳密に成り立つ法則ではありません。それでも、多くの実在気体は通常の計算では十分よく従います。

ずれは高圧でしか起こらないと思うこと

高圧は代表的な原因の1つですが、低温も重要です。気体が凝縮に近づくほど、分子間引力の影響は大きくなります。

ずれはいつも同じ向きに起こると思うこと

そうではありません。引力が支配的なら、実在気体ではしばしば Z<1Z < 1 になります。分子の有限な大きさや短距離での反発が支配的なら、しばしば Z>1Z > 1 になります。

条件が重要だということを忘れること

同じ気体でも、ある条件範囲ではほぼ理想的に振る舞い、別の条件範囲でははっきり非理想的に振る舞うことがあります。圧力や温度を考えずに、その気体を単純に「理想」または「実在」と決めつけることはできません。

理想気体モデルがよく成り立つとき

理想気体モデルは、一般に圧力が比較的低く、気体が凝縮から十分離れているときに最もよく成り立ちます。そのような条件では、分子同士の距離が十分大きいため、大きさや引力の影響が小さくなります。

教科書の簡単な問題で大まかな見積もりをするだけなら影響は小さいこともありますが、高圧系、低温での気体の挙動、液化の問題、そして精度が重要なあらゆる場面では、その違いがずっと重要になります。

実在気体として考えるべきとき

圧力が高い、温度が低い、あるいは気体が相変化の近くにあるときは、より注意して考え始めるべきです。こうした条件では、理想モデルの前提が崩れやすくなります。

化学の授業では、圧力・体積・温度・物質量の関係をすっきり結びつけられるので、理想モデルが依然として出発点として適切です。実在気体の振る舞いは、その最初のモデルにいつ補正が必要になるかを説明してくれます。

類題に挑戦してみよう

同じ nnVVTT を使い、実測圧力を 26.0 atm26.0\ \mathrm{atm} として自分で計算してみましょう。ZZ を求めて、その値がその試料の理想的な振る舞いからのずれについて何を示しているか考えてみてください。

この比較の次の段階に進みたいなら、理想気体の状態方程式が自然な続きになります。なぜなら、簡略化したモデルが実際の計算でどのように使われるかを示してくれるからです。

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