因数定理とは、多項式 P(x)P(x) に対して、P(a)=0P(a)=0 のときに限り一次式 (xa)(x-a) が因数になる、という定理です。推測した解が本当に多項式の因数分解に役立つかを、すばやく確かめる方法のひとつです。

P(a)=0    (xa) is a factor of P(x).P(a)=0 \iff (x-a) \text{ is a factor of } P(x).

候補ごとに毎回わり算をする代わりに、1つの値を代入して調べます。結果が 0 なら、根 aa が見つかっただけでなく、それに対応する一次因数 (xa)(x-a) も見つかったことになります。

因数定理の意味

(xa)(x-a) が因数であるなら、多項式は

P(x)=(xa)Q(x)P(x)=(x-a)Q(x)

と書けます。ここで Q(x)Q(x) はある多項式です。ここで x=ax=a を代入すると、

P(a)=(aa)Q(a)=0.P(a)=(a-a)Q(a)=0.

となります。つまり、因数があれば 0 が生まれます。逆向きも同じくらい重要です。aa を代入して 0 になるなら、(xa)(x-a) で割った余りは 00 なので、(xa)(x-a) は本当に因数です。

このように、因数定理は根と因数を結びつけます。P(a)=0P(a)=0 なら、aa はその多項式の根であり、(xa)(x-a) はそれに対応する一次因数です。

因数定理を使って多項式を因数分解する方法

この定理は、最初にどの aa を試せばよいかまでは教えてくれません。わかるのは、候補があるときにそれをどう判定するかです。

学校の問題では、定数項の約数から整数の候補を考えることがよくあります。最高次の係数が 1 の多項式なら、±1\pm 1±2\pm 2 など、定数項の約数をまず試すのが自然です。ただし、これはあくまで方針であって、必ず当たるとは限りません。

基本的な流れは短くまとまります。

  1. 候補の値 aa を選ぶ。
  2. P(a)P(a) を計算する。
  3. P(a)=0P(a)=0 なら、(xa)(x-a) を因数として書く。
  4. 多項式を (xa)(x-a) で割り、可能ならさらに因数分解を続ける。

例題:3次式を因数分解する

次を因数分解します。

P(x)=x36x2+11x6.P(x)=x^3-6x^2+11x-6.

まずは x=1x=1 を試すのが自然です。

P(1)=16+116=0.P(1)=1-6+11-6=0.

P(1)=0P(1)=0 なので、因数定理より (x1)(x-1) は因数です。次に (x1)(x-1) で割ると、商は

x25x+6.x^2-5x+6.

となります。したがって、

x36x2+11x6=(x1)(x25x+6).x^3-6x^2+11x-6=(x-1)(x^2-5x+6).

さらに、この2次式は

x25x+6=(x2)(x3).x^2-5x+6=(x-2)(x-3).

と因数分解できます。よって、完全な因数分解は

x36x2+11x6=(x1)(x2)(x3).x^3-6x^2+11x-6=(x-1)(x-2)(x-3).

です。大事なのは、特別なひらめきが必要だったわけではないことです。1つの値を試し、0 になることを確かめ、その 0 を因数に変え、最後は普通の因数分解で仕上げました。

因数定理でよくあるミス

符号を取り違える

P(2)=0P(2)=0 なら、因数は (x+2)(x+2) ではなく (x2)(x-2) です。

因数定理では形が (xa)(x-a) なので、因数の中の符号は値 aa の符号と逆になります。

途中で止めてしまう

1つ因数が見つかっても、それで終わりとは限りません。(xa)(x-a) を見つけたら、多項式を割って、可能なら商もさらに因数分解します。

どの多項式でも簡単な整数で試せると思い込む

小さな整数を試す方法が有効なのは、問題の形がそれを後押ししているときです。多項式によっては、整数ではなく、有理数・無理数・複素数の根をもつこともあります。

条件を忘れる

因数定理が使えるのは多項式に対してです。あらゆる代数式にそのまま使える一般的な近道ではありません。

因数定理が役立つ場面

因数定理は、特に次のようなときに役立ちます。

  • 推測した根が本当に成り立つかを確かめたいとき
  • 多項式を段階的に因数分解したいとき
  • 0 と一次因数の関係を結びつけたいとき
  • 組立除法をより効率よく始めたいとき

因数定理は、剰余の定理や組立除法とあわせて使われることがよくあります。実際、(xa)(x-a) で割ったときの余りは P(a)P(a) です。因数定理は、その余りが 00 になる特別な場合だといえます。

似た問題に挑戦してみよう

次の式でも同じ手順を試してみましょう。

x34x2x+4.x^3-4x^2-x+4.

まずは簡単な候補の値を試し、因数定理で一次因数を確認してから、わり算で因数分解を仕上げてみてください。最後に、求めた因数を展開して、元の多項式に戻ることも確かめましょう。

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