因数定理とは、多項式 に対して、 のときに限り一次式 が因数になる、という定理です。推測した解が本当に多項式の因数分解に役立つかを、すばやく確かめる方法のひとつです。
候補ごとに毎回わり算をする代わりに、1つの値を代入して調べます。結果が 0 なら、根 が見つかっただけでなく、それに対応する一次因数 も見つかったことになります。
因数定理の意味
が因数であるなら、多項式は
と書けます。ここで はある多項式です。ここで を代入すると、
となります。つまり、因数があれば 0 が生まれます。逆向きも同じくらい重要です。 を代入して 0 になるなら、 で割った余りは なので、 は本当に因数です。
このように、因数定理は根と因数を結びつけます。 なら、 はその多項式の根であり、 はそれに対応する一次因数です。
因数定理を使って多項式を因数分解する方法
この定理は、最初にどの を試せばよいかまでは教えてくれません。わかるのは、候補があるときにそれをどう判定するかです。
学校の問題では、定数項の約数から整数の候補を考えることがよくあります。最高次の係数が 1 の多項式なら、、 など、定数項の約数をまず試すのが自然です。ただし、これはあくまで方針であって、必ず当たるとは限りません。
基本的な流れは短くまとまります。
- 候補の値 を選ぶ。
- を計算する。
- なら、 を因数として書く。
- 多項式を で割り、可能ならさらに因数分解を続ける。
例題:3次式を因数分解する
次を因数分解します。
まずは を試すのが自然です。
なので、因数定理より は因数です。次に で割ると、商は
となります。したがって、
さらに、この2次式は
と因数分解できます。よって、完全な因数分解は
です。大事なのは、特別なひらめきが必要だったわけではないことです。1つの値を試し、0 になることを確かめ、その 0 を因数に変え、最後は普通の因数分解で仕上げました。
因数定理でよくあるミス
符号を取り違える
なら、因数は ではなく です。
因数定理では形が なので、因数の中の符号は値 の符号と逆になります。
途中で止めてしまう
1つ因数が見つかっても、それで終わりとは限りません。 を見つけたら、多項式を割って、可能なら商もさらに因数分解します。
どの多項式でも簡単な整数で試せると思い込む
小さな整数を試す方法が有効なのは、問題の形がそれを後押ししているときです。多項式によっては、整数ではなく、有理数・無理数・複素数の根をもつこともあります。
条件を忘れる
因数定理が使えるのは多項式に対してです。あらゆる代数式にそのまま使える一般的な近道ではありません。
因数定理が役立つ場面
因数定理は、特に次のようなときに役立ちます。
- 推測した根が本当に成り立つかを確かめたいとき
- 多項式を段階的に因数分解したいとき
- 0 と一次因数の関係を結びつけたいとき
- 組立除法をより効率よく始めたいとき
因数定理は、剰余の定理や組立除法とあわせて使われることがよくあります。実際、 で割ったときの余りは です。因数定理は、その余りが になる特別な場合だといえます。
似た問題に挑戦してみよう
次の式でも同じ手順を試してみましょう。
まずは簡単な候補の値を試し、因数定理で一次因数を確認してから、わり算で因数分解を仕上げてみてください。最後に、求めた因数を展開して、元の多項式に戻ることも確かめましょう。