ディラックのデルタは と書かれ、通常の関数ではなく、分布として理解するのが最も適切です。これは1点に集中した単位量を表し、その基本ルールはふるい分け性です。
これは、積分区間が を含み、かつ がその点で連続、または少なくとも十分に良い性質をもつときに成り立ちます。
平たく言えば、 はサンプラーのように働きます。積分の中では、もう一方の因子の における値を取り出します。
ディラックのデルタ関数の定義と直感
が積分の中に現れると、その効果はすべて に集中します。だからこそ、全体の面積が のスパイクとしてイメージされます。
このイメージは直感には役立ちますが、信頼できる定義はあくまで上の積分のルールです。スパイクの図は、通常の関数の文字どおりのグラフではなく、覚え方として使ってください。
ここからすぐに2つの結果が従います。
また、区間が を含まないなら、
となります。サンプリング点が積分区間の外にあるからです。
なぜディラックのデルタは通常の関数ではないのか
通常の関数なら、たとえば のような値を考えたり、標準的な代数操作をしたりしても、たいてい大きな問題はありません。ディラックのデルタはその枠組みには当てはまりません。
初等的な問題では、 は積分の下で何をするかによって定義するのが最も安全です。「 以外ではすべて で、 では無限大」という言い方は、あくまで大まかな直感であって、完全な定義ではありません。
この区別を意識すると、 を普通の数のように扱ってしまう、といったよくある間違いを防げます。
ふるい分け性を使った計算例
次を計算します。
ステップ1:サンプリング点を見つけます。デルタが なので、サンプリングする点は です。
ステップ2:もう一方の因子に を代入します。
これで計算は終わりです。 を普通のやり方で積分するわけではありません。サンプル点を見つけ、その点で残りの式を評価します。
シフトの読み方を正しく理解する
符号のミスは、誤答の最もよくある原因の1つです。
しかし、
なので、サンプリング点は です。
たとえば、
であり、 ではありません。
ディラックのデルタ関数でよくある間違い
を普通の関数のように扱う
その意味は、積分の中でどう作用するかによって決まります。通常のグラフが描ける関数のように扱うと、たいてい誤った操作になります。
サンプリング点を取り違える
ではサンプルは で取られます。 では です。
積分区間を無視する
積分区間がサンプリング点を含まなければ、積分値は です。まずここを確認するのが最も速いこともよくあります。
への条件を忘れる
標準的なサンプリング則は、もう一方の因子がサンプリング点で十分に良い性質をもつときに使います。多くの入門的な場面では、その点で連続であれば十分です。
ディラックのデルタとクロネッカーのデルタを混同する
ディラックのデルタは連続的な場面で使われます。一方、クロネッカーのデルタは と書かれる離散的な対象で、 のとき 、それ以外では です。
ディラックのデルタ関数はどこで使われるか
ディラックのデルタは、空間の1点や時間の一瞬に集中したものをモデル化したいときに現れます。
典型例としては、力学におけるインパルス力、理想化された点電荷や点質量、信号処理における瞬間的な入力があります。
また、グリーン関数やフーリエ変換・ラプラス変換の方法でも現れ、瞬時に起こる入力を簡潔に表す手段になります。
類題に挑戦してみよう
次を考えてみてください。
まずサンプリング点を見つけ、次にそれを一次式に代入します。もう1つ確認したければ、同じ積分を 上で考え、なぜ答えが変わるのかを比べてみてください。