回路における重ね合わせの定理を使うと、複数の独立電源をもつ線形回路で、ある電圧や電流を、電源を1つずつ考えて求め、その符号付きの結果を足し合わせることで求められます。重ね合わせがどう働くのかを知りたいなら、重要なルールはシンプルです。ほかの独立電源を正しく止め、部分応答を求めてから、それぞれの寄与を足し合わせます。

この方法が使えるのは、回路モデルが線形である場合だけです。初学者向けの典型的な問題では、たいてい抵抗や線形な電源モデルが対象で、非線形な素子の振る舞いは含みません。

重ね合わせの定理とは

ある回路に複数の独立電源があり、1つの抵抗を流れる電流や、ある枝にかかる電圧を求めたいとします。回路全体を一度に解く代わりに、次のように進められます。

  1. 1つの独立電源だけを有効にする
  2. ほかの独立電源を停止する
  3. その電源による寄与を求める
  4. 残りの電源についても同じことを繰り返す
  5. 符号付きの結果を足し合わせる

こうして得られる結果は、線形回路全体を一度に解いたときの電圧や電流と同じになります。

電源を正しく止める方法

ここが最も間違えやすいポイントです。

理想電圧源は、電圧を0 Vに設定します。回路モデルでは、これはその電源を短絡に置き換えることを意味します。

理想電流源は、電流を0 Aに設定します。回路モデルでは、これはその電源を開放に置き換えることを意味します。

回路に従属電源が含まれている場合は、重ね合わせを使うからといって止めてはいけません。従属電源の値は回路変数に依存しているため、そのまま有効にしておきます。

例題:1つのループに逆向きの2つの電圧源がある場合

直列につながれた2つの抵抗 R1=2 ΩR_1 = 2\ \OmegaR2=4 ΩR_2 = 4\ \Omega をもつ1つのループを考えます。この同じループには、2つの理想電圧源 V1=12 VV_1 = 12\ \mathrm{V}V2=6 VV_2 = 6\ \mathrm{V} も含まれています。2つの電源は互いに逆向きに働くとし、時計回りの電流を正と定義します。

全抵抗は

Rtotal=2+4=6 ΩR_{total} = 2 + 4 = 6\ \Omega

です。

では、この同じループを電源ごとに1つずつ解いていきます。

V1V_1 のみの寄与

V2V_2 を停止します。理想電圧源なので、短絡に置き換えます。

すると、V1V_1 によって生じるループ電流は

I1=126=2 AI_1 = \frac{12}{6} = 2\ \mathrm{A}

となります。

これは、選んだ時計回りの正方向に電流を流すので正です。したがって、部分結果は +2 A+2\ \mathrm{A} です。

V2V_2 のみの寄与

V1V_1 を短絡に置き換えて停止します。

すると、V2V_2 だけが同じ全抵抗 6 Ω6\ \Omega に電流を流します。

I2=66=1 AI_2 = \frac{6}{6} = 1\ \mathrm{A}

ただし、この電源は選んだ正方向とは逆向きに電流を流すので、符号を保たなければなりません。

I2=1 AI_2 = -1\ \mathrm{A}

符号付き電流を足し合わせる

全ループ電流は

I=I1+I2=2+(1)=1 AI = I_1 + I_2 = 2 + (-1) = 1\ \mathrm{A}

です。

これが重ね合わせの基本的な考え方です。各電源が応答の一部を作り、全電流はそれらの代数和になります。

回路解析で重ね合わせが役立つ理由

重ね合わせは、回路に複数の独立電源があり、それぞれの電源が何をしているのかを個別に見たいときに便利です。複雑な回路でも整理しやすくなり、最終的な数値を出すだけでなく、物理的な見通しも得られます。

特に、初歩的な回路網解析、小信号の線形モデル、そして各電源の影響を比較したいあらゆる線形回路で有用です。

重ね合わせの問題でよくある間違い

非線形回路で使ってしまう

回路モデルが線形でない場合、この定理はこの単純な形では使えません。ダイオードや、非線形動作条件にあるトランジスタのような素子は、応答を足し合わせるという考え方を崩してしまうことがあります。

従属電源を止めてしまう

1つずつ停止するのは独立電源だけです。従属電源は回路内に残します。

電力の寄与をそのまま足してしまう

重ね合わせを直接適用できるのは電圧電流です。電力は P=VIP = VIP=I2RP = I^2R のような積に依存するので、まず全体の電圧または電流を求め、その合計結果から電力を計算する必要があります。

符号の取り方を失う

各部分寄与では符号を保たなければなりません。ある電源が、選んだ正方向と逆向きに電流を流すなら、その寄与は負になります。

重ね合わせの定理はいつ使うか

重ね合わせの定理は、線形な直流回路や交流回路の解析で使われます。特に、回路に複数の電源があり、求めたいものがある枝の電流や電圧である場合に有効です。交流解析でも、回路を線形なフェーザモデルで扱うなら、同じ考え方がそのまま使えます。

一方で、1本の直接的な式で解いたほうが速い場合には、あまり有利ではありません。電源ごとに考えることで回路の理解や確認がしやすくなるときに、特に価値があります。

似た回路で試してみよう

例題の V2=6 VV_2 = 6\ \mathrm{V}V2=9 VV_2 = 9\ \mathrm{V} に変え、抵抗値は同じままにしてみましょう。まず2つの単独電源による電流をそれぞれ求め、そのあと符号付きの結果を足し合わせてください。自分で解いたあとに手早く確認したいなら、同じ回路を GPAI Solver で比べてみてください。

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