線形代数は、ベクトル、行列、線形変換がどのように働くかを説明する分野です。線形代数の基礎を知りたいなら、中心となる考え方はシンプルです。複数の成分をもつ量と、それらを一貫した方法で組み合わせたり変換したりする規則を扱います。
「線形」という言葉が重要なのは、ふるまいを予測しやすくするからです。ある規則が線形なら、入力を足したとき出力も同じ形で足し合わされ、入力を何倍かすると出力も同じ倍率で変わります。
ベクトルと行列をやさしく説明すると
ベクトルは、順序づけられた数の並びです。実際には、ベクトルは位置、速度、測定値の一覧、あるいは問題の係数を表すことがあります。
たとえば、これは 次元のベクトルです:
行列は、数を長方形に並べたものです。行列は係数をまとめたり、連立方程式を表したり、あるベクトルを別のベクトルへ変換する規則として働いたりします。
これは 行列です:
この違いはしっかり区別しておく価値があります。ベクトルはひとつの数学的対象であり、行列はふつうベクトルを整理したり、ベクトルに規則を適用したりするために使われます。
線形代数で「線形」とは何か
線形代数でいう「線形」は、単に「直線のように見える」という意味ではありません。ある規則が、加法とスカラー倍を保つことを意味します。
が線形変換なら、ベクトル , とスカラー に対して、
かつ
が成り立ちます。
この2つの条件があるからこそ、行列はとても便利です。行列を掛けることで、まさにこの性質をもつ変換をコンパクトに表せます。
この定義からすぐにわかる確認事項が1つあります。すべての線形変換は、零ベクトルを零ベクトルに写します。 のような規則はこの条件を満たさないので、この文脈では線形ではありません。
最初に押さえたい中心的な考え方
スカラーは1つの数、ベクトルは数の並び、行列は数の表です。これらの役割を混同すると、初学者によくあるミスにつながります。
線形結合
線形結合とは、ベクトルをスカラー倍してから足し合わせて作るものです。たとえば、 は と の線形結合です。
この考え方が重要なのは、多くの問題が1つの確認に帰着するからです。つまり、目標のベクトルを、すでに持っているベクトルから作れるかどうかです。
変換としての行列
行列がベクトルに掛かると、ベクトルの各成分を固定された係数で組み合わせます。だから行列は、しばしば変換として説明されます。
線形方程式系
たとえば
のような連立方程式は、行列の形で書けます。線形代数は、この方程式系を解くための道具を与えるだけでなく、解が1つなのか、解がないのか、無数にあるのかも判断できます。
計算例: 行列とベクトルの積
次の行列
と、次のベクトル
を考えます。
を計算するには、行列の各行とベクトルを使って計算します:
出力は新しいベクトルで、その各成分は入力成分の線形結合になっています。ここでは、1つ目の出力成分は 、2つ目は です。
つまり、この行列は入力ベクトルを
に写します。
これが行列とベクトルの積の基本パターンです。各出力成分は、行列の1つの行から作られます。
線形代数でよくあるミス
行列の積を成分ごとの掛け算だと思ってしまう
行列の積は、ふつう対応する位置どうしを掛ける計算ではありません。行と列の組み合わせで計算するので、構造が重要です。
次元を無視する
行列とベクトルを掛けられるのは、行列の列数とベクトルの成分数が一致するときだけです。次元が合わなければ、その積は定義されません。
どの方程式系にも必ず解が1つあると思い込む
それが成り立つのは特定の条件のもとだけです。線形方程式系には、解がないものもあれば、無数に解をもつものもあります。
「線形」を広く使いすぎる
見た目が単純だからといって、その規則が線形とは限りません。 のような項、 のような積、あるいは のような定数のずれは、線形性を壊すことがあります。
線形代数の基礎はどこで使われるか
線形代数は、多くの関連する量と、それらに系統的に作用する規則を含む問題で現れます。
たとえば、コンピュータグラフィックスでは回転や射影、工学では連立方程式、物理では状態モデル、データサイエンスでは行列にもとづく手法で使われます。
基礎の恩恵を受けるのに高度な理論は必要ありません。ベクトル、行列、行列とベクトルの積が理解できれば、その後の話題もずっと学びやすくなります。
似た問題に挑戦してみよう
次を計算してみてください。
そして、各出力成分が何を表しているかを考えてみましょう。この例がしっくりきたなら、別の 行列で自分なりの例も試し、出力がどう変わるか見てみてください。