酸塩基滴定の計算では、測定した滴定体積から未知の濃度や物質量を求めます。多くの問題では、まず既知の溶液のモル数を求め、次に化学反応式の係数比を使って、最後に未知量を計算します。
酸と塩基が の比で反応するなら、近道として使える式は次のとおりです。
この近道が使えるのは、酸 1 mol と塩基 1 mol が反応する場合だけです。係数比が でないときは、この式を無理に使わず、必ず化学反応式に基づいて計算します。
滴定計算で本当にやっていること
滴定計算の中心になるのは 当量点 です。当量点では、酸と塩基が化学反応式の係数比どおりにちょうど反応しています。
毎回、次の流れで考えるとよいです。
- 化学反応式を正しく書いて係数をそろえる。
- 既知の濃度と体積からモル数を求める。
- 反応式のモル比を使う。
- 未知の濃度または体積を求める。
を使って直接モル数を計算する場合、濃度は 、体積は でそろえます。一方、体積が両辺にある比の式を使うなら、単位がそろっていれば mL のままでもかまいません。
一般的な酸塩基滴定の式
次のようなつり合った反応
では、当量点の条件は
です。
ここで を使うと、
となります。
これが信頼できる基本式です。近道の は、 の特別な場合にしか成り立ちません。
例題:未知の酸の濃度を求める
の塩酸 HCl を、 の水酸化ナトリウム NaOH で滴定したとします。NaOH を 加えたところで当量点に達しました。HCl の濃度を求めましょう。
まず、つり合った化学反応式を書きます。
これは の反応なので、当量点では HCl と NaOH のモル数は等しくなります。
ステップ1:加えた NaOH のモル数を求める
NaOH の体積を L に直します。
次に、NaOH のモル数を計算します。
ステップ2:モル比を使う
反応は なので、
となります。
ステップ3:HCl の濃度を求める
酸の体積を L に直します。
そして計算すると、
したがって、塩酸の濃度は です。
多くの滴定問題では考え方は同じです。測定した体積と既知の濃度からモル数を出し、そのモル比から未知量を求めます。
が使えない場合
を早い段階で丸暗記してしまう人は少なくありません。ですが、反応が でないときには、それが誤答の原因になります。
たとえば、硫酸と水酸化ナトリウムの反応は次のとおりです。
ここでは、酸 1 mol に対して塩基 2 mol が反応します。当量点では、
となります。
もし誤って 2 つの をそのまま等しいとしてしまうと、答えは 倍ずれてしまいます。このミスを防いでくれるのが、つり合った化学反応式です。
滴定計算でよくあるミス
終点を完全に正確だと考えてしまう
実際の実験では、指示薬による終点は当量点の近似値にすぎません。ただし、多くの教科書の問題では、特に断りがない限り両者を同じものとして扱います。
化学反応式をつり合わせない
モル比は化学物質の名前から決まるのではなく、つり合った化学反応式から決まります。係数が間違っていれば、計算全体も間違います。
単位を不用意に混ぜる
をそのまま使うなら、体積は L に直します。 のような比の形を使うなら、両辺で体積の単位がそろっていればよいですが、それでも一貫している必要があります。
濃度とモル数を混同する
薄い溶液でも体積が大きければ、濃い溶液の少量と同じモル数を含むことがあります。反応を決めるのは濃度そのものではなく、モル数です。
酸塩基滴定の計算が使われる場面
こうした計算は、未知の濃度を求めたり、標準溶液の濃度を決めたり、調製した溶液が想定どおりの濃度か確認したりするときに使われます。
また、一般的な中和の問題にもよく出てきます。どれだけの酸がどれだけの塩基と反応するかを問う問題では、たいてい同じ量論の考え方が土台になっています。
もう1問、滴定の問題を解いてみよう
例題の数値を 1 つだけ変えて、たとえば NaOH の体積を変えて、最初からもう一度解いてみましょう。近道を丸暗記するのではなく、方法そのものを理解できているか確かめる最も速い方法です。