勾配、発散、回転は、学生が最も混同しやすいベクトル解析の3つの演算子です。手早く区別するなら、勾配はスカラー場が最も速く増加する方向を示し、発散はベクトル場が湧き出しや吸い込みのように振る舞うかを示し、回転はそのベクトル場に局所的な回転があるかを示します。

どの公式より前に大事な条件が1つあります。勾配は温度 T(x,y,z)T(x,y,z) のようなスカラー場に対して定義されます。発散と回転は速度場 F(x,y,z)\mathbf{F}(x,y,z) のようなベクトル場に対して定義されます。

勾配・発散・回転の意味

この3つの演算子は、それぞれ別の問いに答えるものだと考えるとわかりやすいです。

  1. 勾配: スカラー場はどの方向に最も速く増加するか?
  2. 発散: この場所でベクトル場は外へ広がっているか、それとも内側へ集まっているか?
  3. 回転: 場の中に小さな羽根車を置くと回ろうとするか?

出力の型も異なります。勾配と回転はベクトルを返します。発散はスカラーを返します。この1点を押さえるだけでも、多くのミスを防げます。

勾配・発散・回転の公式

もし

f(x,y,z)f(x,y,z)

がスカラー場なら、その勾配は

f=(fx,fy,fz).\nabla f = \left(\frac{\partial f}{\partial x}, \frac{\partial f}{\partial y}, \frac{\partial f}{\partial z}\right).

です。

もし

F(x,y,z)=(P,Q,R)F(x,y,z) = (P,Q,R)

がベクトル場なら、その発散は

F=Px+Qy+Rz,\nabla \cdot F = \frac{\partial P}{\partial x} + \frac{\partial Q}{\partial y} + \frac{\partial R}{\partial z},

であり、回転は

×F=(RyQz,PzRx,QxPy).\nabla \times F = \left( \frac{\partial R}{\partial y} - \frac{\partial Q}{\partial z}, \frac{\partial P}{\partial z} - \frac{\partial R}{\partial x}, \frac{\partial Q}{\partial x} - \frac{\partial P}{\partial y} \right).

です。

これらはデカルト座標での標準公式です。円柱座標や球座標に移ると、座標に応じて公式の形は変わります。

直感的なイメージ: 上り坂、流出、羽根車

丘、流体、そして小さな羽根車を思い浮かべてみてください。

スカラー場では、勾配は上り坂の方向を向きます。その向きは最も急な方向で、大きさはどれだけ急に増加するかを表します。

ベクトル場では、発散は小さな領域から出ていく流れの量が、入ってくる流れの量より多いかどうかを示します。発散が正なら正味の流出です。負なら正味の流入です。発散がゼロでも、その点で場そのものがゼロという意味ではなく、正味の湧き出しや吸い込みがないという意味です。

回転は、その場に置いた小さな羽根車が回ろうとするかどうかを示します。33次元では回転はベクトルで、その向きは右手の法則に従って局所的な回転軸を表します。

計算例: 混同せずに3つすべてを求める

これらの演算子は入力の種類が異なるので、わかりやすい例としては1つのスカラー場と1つのベクトル場を使うのが自然です。

スカラー場を

T(x,y,z)=x2+y2+zT(x,y,z) = x^2 + y^2 + z

とし、ベクトル場を

F(x,y,z)=(y,x,z).\mathbf{F}(x,y,z) = (-y, x, z).

とします。

1. TT の勾配

各偏微分を計算すると、

Tx=2x,Ty=2y,Tz=1.\frac{\partial T}{\partial x} = 2x, \qquad \frac{\partial T}{\partial y} = 2y, \qquad \frac{\partial T}{\partial z} = 1.

したがって、

T=(2x,2y,1).\nabla T = (2x, 2y, 1).

(1,2,0)(1,2,0) では、

T(1,2,0)=(2,4,1).\nabla T(1,2,0) = (2,4,1).

です。つまり (1,2,0)(1,2,0) からは、場 TT は方向 (2,4,1)(2,4,1) に最も速く増加します。

2. F\mathbf{F} の発散

ここでは P=yP = -y, Q=xQ = x, R=zR = z です。したがって、

F=(y)x+xy+zz=0+0+1=1.\nabla \cdot \mathbf{F} = \frac{\partial (-y)}{\partial x} + \frac{\partial x}{\partial y} + \frac{\partial z}{\partial z} = 0 + 0 + 1 = 1.

答えはスカラーです。正の値なので、この場は各点で正味の流出をもっています。

3. F\mathbf{F} の回転

次に回転の公式を使います。

×F=(zyxz,(y)zzx,xx(y)y).\nabla \times \mathbf{F} = \left( \frac{\partial z}{\partial y} - \frac{\partial x}{\partial z}, \frac{\partial (-y)}{\partial z} - \frac{\partial z}{\partial x}, \frac{\partial x}{\partial x} - \frac{\partial (-y)}{\partial y} \right).

これを計算すると、

×F=(00,00,1(1))=(0,0,2).\nabla \times \mathbf{F} = (0 - 0, 0 - 0, 1 - (-1)) = (0,0,2).

となります。したがって、この場は zz 軸まわりの局所的な回転をもっています。

この例で押さえたい要点は次の3つです。

  1. T=(2x,2y,1)\nabla T = (2x,2y,1) は最も速い増加を表すベクトル。
  2. F=1\nabla \cdot \mathbf{F} = 1 は流出を表すスカラー。
  3. ×F=(0,0,2)\nabla \times \mathbf{F} = (0,0,2) は回転を表すベクトル。

勾配・発散・回転でよくある間違い

最も多い間違いは、場の種類に合わない演算子を使ってしまうことです。勾配はスカラー場に作用します。発散と回転はベクトル場に作用します。

もう1つの間違いは、記号だけを見て覚えようとすることです。発散を流出、回転を回転運動と結びつけて理解すると、公式はずっと覚えやすくなります。

また、発散がゼロだと「何も起きていない」と読んでしまうこともよくあります。これは正しくありません。ベクトル場はゼロでなくても、その点で正味の流出がゼロであることはあります。

回転についても、「経路が曲がって見えるかどうか」の判定だと考えるのは落とし穴です。回転が表すのは局所的な回転の傾向であって、大きなスケールで見た場の線の曲がり方だけではありません。

これらの演算子はどこで使うのか

勾配は最適化、熱の流れ、電位などに現れます。どの方向に最も速く変化するかを教えてくれます。

発散は、流体力学や電磁気学で、湧き出し・吸い込み・保存則を考えるときに現れます。

回転は、流体の回転やマクスウェル方程式で重要です。そこでは局所的な循環が意味をもちます。

この3つを合わせると、空間での変化を3つの異なる見方で測れることになります。だからこそ、これらは単に別々の公式ではなく、ベクトル解析の基本的な道具なのです。

似た問題を自分でもやってみよう

場を少し変えて、もう一度計算してみましょう。

T(x,y,z)=x2+y2z,F(x,y,z)=(y,x,2z).T(x,y,z) = x^2 + y^2 - z, \qquad \mathbf{F}(x,y,z) = (-y, x, 2z).

新しい勾配、発散、回転を求めて、何が変わり、何が同じままかを比べてみてください。次の自然なステップとして、別のスカラー場とベクトル場で自分なりの例を作り、計算だけでなく意味にも照らして答えを確かめてみるとよいでしょう。

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