内積は、同じ次元をもつ2つのベクトルを掛け合わせて、1つの数を返す演算です。座標で書くと、

u=(u1,u2,,un),v=(v1,v2,,vn),u = (u_1, u_2, \dots, u_n), \qquad v = (v_1, v_2, \dots, v_n), uv=u1v1+u2v2++unvn.u \cdot v = u_1v_1 + u_2v_2 + \dots + u_nv_n.

通常のユークリッド空間では、この同じ値には幾何学的な意味もあります。

uv=uvcosθ,u \cdot v = |u||v|\cos\theta,

ここで θ\theta は2つのベクトルのなす角です。つまり、内積は単なる計算公式ではありません。2つのベクトルがどれだけ同じ向きを向いているかも表します。

内積でわかること

内積は、答えが別のベクトルではなくスカラーになるので、スカラー積とも呼ばれます。

ユークリッド空間では、符号を見るだけで角度の様子がすぐにわかります。内積が正なら角は鋭角、内積が 0 なら両方のベクトルが 0 ベクトルでない限り直交、内積が負なら角は鈍角です。

特に重要なのは、ベクトルを自分自身と内積する場合です。

uu=u12+u22++un2.u \cdot u = u_1^2 + u_2^2 + \dots + u_n^2.

ユークリッド空間では、これは u2|u|^2 に等しいので負にはなりません。そのため、uuu \cdot u は平方根を取らずに長さを調べるときによく使われます。

内積の計算方法

座標による公式は、次の3ステップで使えます。

  1. ベクトルを同じ順序で書き、次元が同じか確認する。
  2. 対応する成分どうしを掛ける。
  3. その結果を足し合わせる。

成分の並び替えはしません。1番目は1番目、2番目は2番目、というように対応させます。

内積の計算例

次のベクトルの内積を求めます。

u=(2,1,3),v=(4,5,1).u = (2, -1, 3), \qquad v = (4, 5, 1).

対応する成分を掛けると、

24=8,(1)5=5,31=3.2 \cdot 4 = 8, \qquad (-1) \cdot 5 = -5, \qquad 3 \cdot 1 = 3.

これを足すと、

uv=8+(5)+3=6.u \cdot v = 8 + (-5) + 3 = 6.

したがって、内積は 66 です。

この 66 は何を意味するのでしょうか。ユークリッド空間では、結果が正なので2つのベクトルのなす角は鋭角だとわかります。これはベクトルが等しいとか平行だという意味ではありません。向きの重なり方が正であることだけを示しています。

内積の幾何学的意味

ユークリッド幾何では、内積は一方のベクトルが他方のベクトルの向きにどれだけ向いているかを測る量です。ベクトルがほぼ同じ向きなら、内積は大きな正の値になります。直角なら内積は 00 です。ほぼ反対向きなら、内積は負になります。

これは次の公式からわかります。

uv=uvcosθu \cdot v = |u||v|\cos\theta

余弦の項が符号と大きさを決めるからです。

  • cosθ>0\cos\theta > 0 なら鋭角なので、内積は正。
  • cosθ=0\cos\theta = 0 なら直角なので、内積は 00
  • cosθ<0\cos\theta < 0 なら鈍角なので、内積は負。

この角度による解釈は、標準的なユークリッド内積に依存しています。別の内積を使っている場合は幾何学的な意味が変わることがあるので、いつもの角度のイメージをそのまま使えるとは限りません。

内積でよくあるミス

先に次元を確認しない

標準的な内積は、2次元ベクトルと3次元ベクトルの間では定義されません。ベクトルは同じ個数の成分をもつ必要があります。

内積と成分ごとの掛け算を混同する

(2,3)(2,3)(4,5)(4,5) の内積は

24+35=23,2 \cdot 4 + 3 \cdot 5 = 23,

であって、(8,15)(8,15) ではありません。

結果が正なら平行だと考えてしまう

内積が正だとわかるのは、ユークリッド空間で角が鋭角だということだけです。内積が正になるベクトルの組はたくさんあります。

uv=0u \cdot v = 0 なら垂直」という条件を忘れる

この主張は、標準的なユークリッド空間では正しいです。入門レベルの問題の多くはこの設定ですが、それでも条件は大切です。

内積はどこで使うのか

内積は、向きが重要で、最終的な答えは1つの数であってほしい場面で現れます。

幾何では、直交の判定や角度の計算に役立ちます。物理では、仕事のように、力のうち運動の向きにある成分だけが効く公式に現れます。線形代数や応用数学では、射影、最小二乗法の考え方、類似度の計算にも登場します。

似た内積の問題に挑戦してみよう

次を試してみてください。

u=(1,2,2),v=(3,1,4).u = (1, 2, -2), \qquad v = (3, -1, 4).

まず uvu \cdot v を計算し、次に uuu \cdot u を計算します。2つ目の値を見ると、ベクトルを自分自身と内積したときのふるまいが、異なる2つのベクトルの内積とどう違うのかがよくわかります。

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