有機反応は、「何が変わったか」を見ると分類しやすくなります。 炭素上の1つの基が別の基に置き換わったなら、まず置換反応を考えます。新しい π 結合ができたなら、脱離反応を考えます。すでにある や 結合に原子が付け加わったなら、付加反応です。
有機化学の初歩で出てくる多くの問題では、この最初の分け方だけで SN1、SN2、E1、E2、または付加反応までかなり絞れます。次に条件を確認します。脱離基があるか、反応中心の炭素が第一級・第二級・第三級のどれか、強塩基や求核剤があるか、カルボカチオンが現実的にできるかを見ます。
SN1、SN2、E1、E2、付加反応をすばやく見分ける方法
| 種類 | 何が変わるか | 起こりやすい条件 | 基本の考え方 |
|---|---|---|---|
| SN1 | 脱離基が置き換わる | 基質が比較的安定なカルボカチオンを作れる | 2段階の置換 |
| SN2 | 脱離基が置き換わる | 基質があまり混み合っておらず、よい求核剤が直接攻撃できる | 1段階の置換 |
| E1 | π 結合ができる | カルボカチオンができ、その中間体の後で脱離が競合する | 2段階の脱離 |
| E2 | π 結合ができる | 強塩基が β 水素を引き抜くのと同時に脱離基が出ていく | 1段階の脱離 |
| 付加反応 | π 結合に原子が加わる | 出発物質がすでに または 結合をもつ | π 結合が新しい σ 結合になる |
この表は目安であって、絶対的な法則ではありません。実際の生成物は、基質、試薬、溶媒、そして場合によっては温度にも左右されます。
たいてい使える簡単な判断ルール
- 出発物質が 炭素上に脱離基をもつなら、主な競争はたいてい置換か脱離です。
- 出発物質がすでに π 結合をもち、脱離基が問題の中心でないなら、まず付加反応を考えるのがよい判断です。
- 反応中心の炭素が第一級なら、SN1 より SN2 のほうが起こりやすいことが多いです。
- 反応中心の炭素が第三級なら、通常の SN2 は起こりにくいので、条件に応じて SN1、E1、E2 が主な候補になります。
- 強塩基があり、しかも β 水素があるなら、E2 の可能性がかなり高くなります。
それぞれの反応は実際には何を意味するのか
SN1
SN1 は substitution nucleophilic unimolecular の略です。律速段階では基質だけが関わり、まず脱離基が先に出ていってカルボカチオンができます。
そのため、できるカルボカチオンが比較的安定なら SN1 は起こりやすくなります。特に多くの第三級基質でその傾向があります。転位によってカルボカチオンがより安定になるなら、生成物が変わることもあります。
SN2
SN2 は substitution nucleophilic bimolecular の略です。求核剤が攻撃するのと同時に脱離基が出ていくので、反応は1段階で進みます。
この攻撃では求核剤が反応中心の炭素に直接近づく必要があるため、立体障害が非常に重要です。第一級基質は第三級基質より SN2 を起こしやすいことが多く、第三級基質ではその混み合った炭素で通常の SN2 は起こりません。
E1
E1 は elimination unimolecular の略です。SN1 と同じように、まず脱離基が外れてカルボカチオンができます。その後、塩基が β 水素を引き抜き、π 結合ができます。
SN1 と E1 はどちらもカルボカチオンを経由するので、似た条件で競合しやすいです。加熱すると脱離がより有利になることが多いですが、それは傾向であって必ずそうなるわけではありません。
E2
E2 は elimination bimolecular の略です。1つの協奏的な段階で、塩基が β 水素を引き抜くのと同時に脱離基が出ていき、π 結合ができます。
E2 は、強塩基があり、しかも β 水素が存在するときによく見られます。第二級基質や第三級基質では、強塩基があると置換より E2 に進みやすくなることがよくあります。
付加反応
付加反応は通常、アルケンやアルキンから始まります。ある基が抜けるのではなく、分子が π 結合をまたいで新しい原子を受け取ります。
初学者向けのよくある例は、アルケンへの の付加です。二重結合が切れ、試薬由来の原子が、もともと二重結合していた2つの炭素に入ります。
これらの反応が腑に落ちる直感
これらの反応を理解する最も速い方法は、その分子が構造的に何をできるかを考えることです。
飽和炭素に脱離基があるなら、その基を別の基に置き換えるか、隣の水素を取り去って π 結合を作ることができます。すでに π 結合があるなら、そこに付加する反応が起こるかもしれません。この1つの構造的な問いだけで、曲矢印を考える前に初学者向けの問題の多くを整理できます。
その次に、試薬が求核剤として働いているのか、それとも塩基として働いているのかを考えます。強い求核剤は置換を助けることが多いです。強い塩基は脱離を助けることが多いです。両方の性質をもつ試薬もあるので、その場合は基質と条件がどちらの経路が優勢かを決めます。
例題:なぜ 2-ブロモプロパンは E2 になりやすいのか
-ブロモプロパンをエタノール中でナトリウムエトキシド と反応させる場合を考えます。
まず基質を見ます。臭素がついている炭素は第二級なので、原理的には置換も脱離もどちらも可能です。
次に試薬を見ます。エトキシドは強塩基であり、同時によい求核剤でもあります。第二級基質に対しては、この時点で E2 がかなり有力です。
次に、E2 に必要な条件を考えます。必要なのは脱離基と β 水素です。この分子にはその両方があるので、脱離は1段階で進めます。
教科書的によくある条件では、特に加熱があると E2 が主経路と予想されることが多いです。有機生成物はプロペンです。塩基が β 水素を引き抜くのと同時に臭化物イオンが脱離するからです。
この例が重要な理由:
- 第二級基質では実際に競合が起こりうる
- 強塩基があると脱離が起こりやすくなる
- アルケンが生成しているので、反応は置換ではなく脱離だとわかる
基質や試薬を変えると、予想も変わります。立体障害の小さい第一級基質なら、SN2 はもっと有力になります。
有機反応の分類でよくある間違い
強塩基と強求核剤を同じものとして扱う
両方の働きをできる試薬もあります。しかし、基質も同じくらい重要です。第一級基質に対する強い求核剤は SN2 を示しやすく、より混み合った基質に対する強塩基は E2 を示しやすいです。
第三級なら自動的に SN1 だと思い込む
第三級基質では通常の SN2 は起こりませんが、だからといって自動的に SN1 になるわけではありません。強塩基があるなら、E2 のほうがよい予想であることが多いです。
SN1 と E1 が同じカルボカチオンを共有することを忘れる
カルボカチオンができるなら、転位が可能になることがあり、置換と脱離が競合します。だからこの2つの機構はよく一緒に扱われます。
すべてのアルケン反応を付加反応と呼ぶ
付加反応では、原子が π 結合をまたいで加わります。逆に、反応によって二重結合が新しくできるなら、それは脱離反応です。
これらの有機反応はどこで使われるのか
これらの反応型は、有機合成入門や反応機構の問題の土台になります。次のような予測に役立ちます。
- 分子がより置換された形になるのか、より不飽和になるのか
- 試薬が脱離基を置き換えそうか、それとも水素を引き抜きそうか
- 反応条件によって主生成物がどう変わるか
- 同じ基質でも試薬が違うとなぜ挙動が変わるのか
これらは試験のためだけではありません。同じ考え方は、化学者がある炭素骨格から別の炭素骨格への合成経路を考えるときにも役立ちます。
似た分類問題をやってみよう
-ブロモブタンのような脱離基をもつ基質を1つ選び、シアン化ナトリウム、ナトリウムエトキシド、水とそれぞれ組み合わせたときに予想がどう変わるか考えてみましょう。1回に1つの条件だけを変えるのは、SN1、SN2、E1、E2 を暗記ではなく筋道立てて理解する最も速い方法の1つです。続けて学ぶなら、このページを求核置換反応と比べてみてください。