レンツの法則は、誘導電流の向きを求めるための法則です。ループを貫く磁束が変化すると、誘導電流はその変化を打ち消す向きの磁場をつくります。回路が開いている場合でも誘導起電力は生じますが、持続的な電流は流れません。

重要な語は 変化 です。誘導電流は、単に外部磁場そのものに逆らうわけではありません。ループを貫く磁束の増加または減少に逆らいます。

レンツの法則を1つの式で表すと

ファラデーの法則とレンツの法則は、しばしば次のようにまとめて書かれます。

E=dΦBdt\mathcal{E} = -\frac{d\Phi_B}{dt}

巻数が NN のコイルでは、理想化した形は次のようになります。

E=NdΦBdt\mathcal{E} = -N\frac{d\Phi_B}{dt}

マイナス符号がレンツの法則に対応する部分です。これは向きを表しており、誘導起電力が、磁束の変化を打ち消す磁気的効果をもつ電流を生じさせることを示しています。

この法則が実際に言っていること

磁束は、どれだけの磁場がループを通り抜けているかを表す量です。その磁束が変化すると、誘導起電力が生じます。ループが閉じた導体なら、その起電力によって電流が流れます。

レンツの法則は、その電流がどちら向きに流れるかを教えてくれます。ループを貫く外部磁束がある向きに増加しているなら、誘導電流は反対向きの磁場をつくります。外部磁束が減少しているなら、その減少を妨げるために、誘導電流は元の磁束と同じ向きの磁場をつくります。

だからこの法則は、磁場そのものに逆らう のではなく、変化に逆らう というルールなのです。

例題:磁石がループに近づく場合

棒磁石のN極が導体ループにまっすぐ近づくとします。磁石側からループを見ます。

磁石が近づくにつれて、ループを貫く磁束は増加します。レンツの法則によれば、ループはその増加を打ち消す向きの磁場を自分でつくらなければなりません。

つまり、磁石に近い側のループ面はN極のようにふるまう必要があります。すると反発する相互作用が生じ、増え続ける磁束に逆らうことになります。

電流ループに対する右手の法則を使うと、磁石側から見た誘導電流は反時計回りになります。

同じ磁石が逆に遠ざかる場合は、その向きの磁束は減少します。すると誘導電流は向きを反転し、ループは元の磁束の向きを保とうとします。このとき、磁石側から見た電流は時計回りです。

向きを段階的に求める方法

向きを問う問題がごちゃごちゃして感じられるときは、次の順序で考えるとよいです。

  1. ループを貫く磁束の正の向きを決める。
  2. その向きの外部磁束が増加しているか減少しているかを判断する。
  3. レンツの法則を使って、その変化を打ち消す誘導磁場の向きを決める。
  4. 右手の法則を使って、その誘導磁場の向きを電流の向きに変換する。

暗記だけで答えを当てようとするより、たいていこちらのほうが安全です。

レンツの法則でよくある間違い

  • 誘導電流は磁場に逆らう、と言ってしまうこと。より安全な言い方は、磁束の変化に逆らう、です。
  • 磁束を考える段階を飛ばして、運動から直接電流の向きを当てようとすること。
  • 誘導起電力は生じても、閉じた導体の経路がなければ持続的な電流は流れないことを忘れること。
  • 磁場の向きを求める右手の法則と、運動する電荷に働く力の右手の法則を混同すること。
  • レンツの法則をファラデーの法則と別物として扱うこと。実際には、ファラデーの法則の向きに関する部分です。

レンツの法則が現れる場面

レンツの法則は、発電機、変圧器、インダクタ、渦電流ブレーキ、IH調理器、そして電磁気学の多くの基本問題で使われます。

また、誘導に関する問題を物理的に矛盾なく保つ役割もあります。エネルギー源がないのに誘導効果が磁束変化をさらに強めることはできないので、レンツの法則の符号は重要です。

似たケースを試してみよう

例の運動を逆にして、自分でも考えてみましょう。同じループと磁石を使い、今度は磁石がループから遠ざかるとします。磁束が増加しているのか減少しているのかを判断し、そのあと右手の法則で確かめる前に、電流の向きを予想してみてください。

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