ベクトルは、大きさと向きを同時に表す量です。座標では、 や のようなベクトルは、各軸方向にどれだけ移動するかを示します。こうした成分から、大きさを求めたり、ベクトルを足したり、内積を計算したりできます。
1つだけ覚えるなら、次の考え方です。ベクトルは単なる長さではありません。向きも量の一部なので、計算でもその向きを保つ必要があります。
座標でベクトルが意味すること
スカラーは大きさだけをもつ量です。温度、質量、時間は代表的なスカラーの例です。ベクトルは大きさと向きをもちます。変位、速度、力は標準的な例です。
初歩の数学や物理では、ベクトルは成分を並べた順序付きの組として書かれることが多いです。 次元では、
次元では、
成分の個数は重要です。ベクトル同士をそのまま足したり、標準的な内積をとったりできるのは、同じ次元にあるベクトル同士だけです。
ベクトルの大きさの求め方
ベクトルの大きさは、その長さのことです。通常のユークリッド空間では、 の大きさは
であり、 では
これは、ベクトル版の三平方の定理の考え方です。大きさはベクトルがどれだけ長いかを表し、成分の符号や相対的な大きさが向きを決める手がかりになります。
1つ注意したいのは、零ベクトルの大きさは ですが、向きは1つに定まりません。
ベクトルの加法のしくみ
ベクトルを足すときは、対応する成分どうしを足します。
結果は、やはり別のベクトルです。これは重要で、和にも大きさと向きの両方があるからです。
そのため、ふつうは大きさだけを足してはいけません。2つのベクトルが異なる向きを向いているなら、合成された効果は大きさだけでなく、両方の向きに依存します。
内積が教えてくれること
内積は、同じ次元の2つのベクトルを受け取り、1つのスカラーを返します。
これは、2つのベクトルがどれだけ同じ向きにそろっているかを表します。通常のユークリッド空間では、さらに
が成り立ちます。ここで は2つのベクトルのなす角です。
この式から、次のようにすばやく解釈できます。
- なら、角は鋭角です。
- なら、零でないベクトル同士は垂直です。
- なら、角は鈍角です。
この角度による解釈は、通常のユークリッド内積に依存しています。これは、初学者向けの数学や物理で使われる標準的な形です。
計算例:大きさ・加法・内積をまとめて見る
次のようにします。
まず大きさを求めます。 については、
については、
したがって、2つのベクトルは向きが違っていても、大きさは同じです。
次に足します。
和は新しいベクトルであり、数 ではありません。その大きさは
次に内積を計算します。
内積が なので、これらの零でないベクトルは通常のユークリッド平面で垂直です。この1つの例から、基本的なパターンがはっきりわかります。
- 大きさはサイズを表す
- 加法は新しいベクトルをつくる
- 内積はそろい具合を測る
ベクトルでよくあるミス
ベクトルではなく大きさを足してしまう
を求めることは、 を求めることと同じではありません。ベクトルが同じ向きを向いている場合を除けば、これらは別の量です。
同じ次元という条件を無視する
次元ベクトルと 次元ベクトルをそのまま足すことはできませんし、それらの間で標準的な内積をとることもできません。
内積と数による掛け算を混同する
内積の結果は1つのスカラーです。別のベクトルが出てくるわけではありません。
適切な設定なしに角度のルールを使う
上で述べた大きさの公式や、内積の幾何学的な解釈は、通常のユークリッド空間を前提にしています。これは多くの初級講義での標準設定ですが、それでも条件であることに変わりはありません。
ベクトルはどこで使われるか
ベクトルは、向きが重要になるあらゆる場面に現れます。幾何では、点、直線、射影、角度を表すのに役立ちます。物理では、変位、速度、加速度、力に使われます。工学やグラフィックスでは、運動、向き、空間内の変化を表現するのに役立ちます。
ベクトルをうまく使い始めるのに、高度な線形代数は必要ありません。多くの問題では、やることは単純です。成分を正しく書き、適切な演算を行い、その結果を解釈するだけです。
似たベクトルの問題をやってみよう
例を 、 に変えてみましょう。それぞれのベクトルの大きさを求め、足し算をし、内積を計算してください。そのうえで、2つのベクトルのなす角が鋭角、直角、鈍角のどれかを判断しましょう。
手早く確認したいなら、まず同じ組を手計算で解いてから、ソルバーの結果と比べてみてください。そうすると、符号ミスや成分の取り違えに気づきやすくなります。