化学平衡とは、可逆反応において正反応と逆反応が同じ速さで進み、全体の組成が変化しなくなる状態です。これは両辺の物質量が等しいことを意味するわけではありません。高校化学・初学者向けの問題では、中心となる道具は KcKcKpKp、そしてルシャトリエの原理です。

生成物が有利か反応物が有利かを判断したいなら、まず平衡定数の式を書きます。変化がどちら向きに進むかを予測したいなら、ルシャトリエの原理を使うか、QQKK を比較します。

化学平衡とは「量が等しい」ではなく「速さが等しい」こと

次の可逆反応を考えます。

aA+bBcC+dDaA + bB \rightleftharpoons cC + dD

平衡では、正反応の速さと逆反応の速さが等しくなります。だからこそ、AABBCCDD の量は時間がたっても変化しなくなります。

ただし、これは量が等しいことを意味しません。平衡状態でも、反応物が大部分を占める場合もあれば、生成物が大部分を占める場合もあり、両者が近い割合になる場合もあります。条件は 50:50 であることではなく、反応速度が等しいことです。

KcKc の式の書き方

KcKc は濃度で表した平衡定数で、初学者向けの化学では通常 mol/L\mathrm{mol/L} を用います。

上の一般式に対して、

Kc=[C]c[D]d[A]a[B]bKc = \frac{[C]^c[D]^d}{[A]^a[B]^b}

となります。

式に入るのは、混合物中で濃度が意味のある形で変化する化学種だけです。標準的な初学者向けの扱いでは、純固体と純液体は活量を一定とみなすため、式から省きます。

KcKc の大きさを見ると、平衡がどちら側にあるかを大まかにつかめます。

  • Kc1Kc \gg 1 なら、平衡では生成物側が有利です。
  • Kc1Kc \ll 1 なら、平衡では反応物側が有利です。
  • KcKc11 に近いなら、どちらか一方が強く有利とはいえません。

ただし、これはあくまで傾向です。実際の問題を解くには、正しい式と正しい指数を使う必要があります。

代わりに KpKp を使うのはいつか

KpKp は気体平衡に対する平衡定数で、分圧で表します。

Kp=(PC)c(PD)d(PA)a(PB)bKp = \frac{(P_C)^c(P_D)^d}{(P_A)^a(P_B)^b}

反応が気体の分圧で与えられているときは KpKp を使います。反応に気体が含まれないなら、通常 KpKp は自然な選択ではありません。

気体平衡では、KcKcKpKp は次の関係で結ばれます。

Kp=Kc(RT)ΔngasKp = Kc(RT)^{\Delta n_{\mathrm{gas}}}

ここで Δngas\Delta n_{\mathrm{gas}}

Δngas=気体生成物のモル数気体反応物のモル数\Delta n_{\mathrm{gas}} = \text{気体生成物のモル数} - \text{気体反応物のモル数}

です。

この関係は、通常の初学者向けの形で扱う気相平衡に適用されます。気体が存在しない場合、Δngas\Delta n_{\mathrm{gas}} は重視すべき道具ではありません。

例題:N2O4(g)2NO2(g)N_2O_4(g) \rightleftharpoons 2NO_2(g)KcKc を求める

ある温度での平衡混合物が

[N2O4]=0.40 M,[NO2]=0.20 M[N_2O_4] = 0.40 \text{ M}, \qquad [NO_2] = 0.20 \text{ M}

であったとします。

すると

Kc=[NO2]2[N2O4]=(0.20)20.40=0.10Kc = \frac{[NO_2]^2}{[N_2O_4]} = \frac{(0.20)^2}{0.40} = 0.10

となります。

したがって、この温度では Kc<1Kc < 1 なので、この平衡は反応物側が有利です。大事なのは数値を暗記することではありません。NO2NO_2 の前の係数 22 が、平衡定数の式では指数になることに気づくことです。

同じ反応では、Δngas=21=1\Delta n_{\mathrm{gas}} = 2 - 1 = 1 なので、

Kp=Kc(RT)Kp = Kc(RT)

となります。

これにより、この気体反応で濃度による表し方と圧力による表し方がどう結びつくかがわかります。

ルシャトリエの原理で移動方向を予測する

ルシャトリエの原理は、変化の向きを判断するための道具です。平衡にある系に外部から変化を加えると、その変化を一部打ち消す向きに平衡が移動します。

つまり、「どちら向きに動くか」には答えられますが、新しい平衡での正確な量までは教えてくれません。

濃度の変化

反応物を加えると、平衡は一般に生成物側へ移動します。生成物を加えると、平衡は反応物側へ移動します。ある化学種を取り除くと、平衡は取り除かれた分を一部補う向きに移動します。

この近道が使えるのは、平衡定数の式に関係する化学種だけです。純固体の量だけを変えても、同じような濃度ベースの移動則にはなりません。

圧力または体積の変化

よく使う圧力の近道は、気体平衡で意味をもちます。体積が減ると圧力が上がり、平衡は気体のモル数が少ない側へ移動する傾向があります。体積が増えると、気体のモル数が多い側へ移動する傾向があります。

両辺の気体の総モル数が同じなら、この近道では体積変化だけによる移動は起こらないと予測します。

温度の変化

温度は特別で、平衡定数そのものの値を変えることがあります。

熱を反応の一部として考えます。正反応が発熱反応なら、熱は生成物のように振る舞います。正反応が吸熱反応なら、熱は反応物のように振る舞います。だからこそ、温度を上げたときに有利になる向きは、反応によって逆になることがあります。

触媒

触媒は、系が平衡に達するまでの速さを上げますが、それ自体で平衡の位置を変えることはありません。

方向予測には QQKK を比べる

平衡に達する前のその時点の濃度や圧力を、同じ式に代入して得られる値を反応商 QQ といいます。

  • Q<KQ < K なら、系は右へ移動する傾向があります。
  • Q>KQ > K なら、系は左へ移動する傾向があります。
  • Q=KQ = K なら、系は平衡にあります。

この方法は、単に「生成物が有利」「反応物が有利」といった曖昧な感覚より信頼しやすいことが多いです。なぜなら、実際の式を使って判断しているからです。

化学平衡の問題でよくあるミス

「速さが等しい」と「量が等しい」を混同する

平衡では反応速度が等しくなります。濃度が等しい必要はありません。

係数が指数になることを忘れる

KcKcKpKp では、係数は指数になります。平衡式に 2NO22NO_2 があれば、式では [NO2]2[NO_2]^2 または (PNO2)2(P_{NO_2})^2 を使います。

純固体や純液体を式に入れてしまう

標準的な初学者向けの平衡定数の式では、純固体と純液体は入れません。

ルシャトリエの原理を計算機のように使う

ルシャトリエの原理は移動方向を確実に示してくれますが、最終的な正確な量までは与えません。

どんな変化でも KK が変わると思い込む

温度が一定なら、濃度・圧力・体積の変化によって平衡の位置は移動しても、KK の値自体は変わりません。初学者向け化学では、主な例外は温度変化です。

化学平衡はどこで使われるか

化学平衡は化学のさまざまな分野に現れます。気体反応、酸塩基系、溶解平衡、錯イオン生成、工業反応の設計などです。反応が両方向に進みうるとき、そして最終組成が条件に依存するときには、化学平衡が重要になります。

また、化学平衡は学生が別々に学びがちな概念をつなぎます。反応速度論は、系がどれくらい速く変化するかを説明します。平衡は、その系がある温度で最終的にどの状態に落ち着くかを説明します。

似た平衡問題に挑戦してみよう

次の反応でも同じ手順を試してみましょう。

H2(g)+I2(g)2HI(g)H_2(g) + I_2(g) \rightleftharpoons 2HI(g)

まず KcKc の式を書きます。次に、HIHI をさらに加えたらどうなるか、あるいは容器を圧縮したらどうなるかを考えます。後者は特に確認に役立ちます。両辺の気体の総モル数が同じなので、通常の圧力の近道では移動しないと予測されるからです。

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