交流回路解析では、インピーダンスフェーザを使って、一定周波数の正弦波回路を解きます。回路が正弦波定常状態にあるなら、抵抗・コイル・コンデンサを複素インピーダンスに置き換え、微分方程式ではなく代数計算で大きさと位相を求められます。

基本の考え方はシンプルです。オームの法則やキルヒホッフの法則はそのまま使えますが、位相のずれも扱えるように、量を複素数として表します。

交流回路でインピーダンスが意味するもの

直流では、電流の流れにくさを表すのに抵抗だけで十分なことが多いです。交流では、コンデンサやコイルも各周期でエネルギーを蓄えたり放出したりするため、重要になります。その結果、位相差が生じ、実数1つだけでは表しきれません。

そこで両方をまとめて扱うのがインピーダンスです。角周波数 omega\\omega の正弦波信号に対して、

ZR=RZ_R = R ZL=jomegaLZ_L = j\\omega L ZC=frac1jomegaC=fracjomegaCZ_C = \\frac{1}{j\\omega C} = -\\frac{j}{\\omega C}

となります。ここで j2=1j^2 = -1 です。この理想モデルでは、抵抗は位相差を生まず、コイルは正の虚数インピーダンス、コンデンサは負の虚数インピーダンスを持ちます。

周波数が変わると、コイルとコンデンサのインピーダンスも変わります。だから交流回路解析では、必ず周波数を明示する必要があります。

フェーザが表しているもの

フェーザは、正弦波をその大きさと位相で簡潔に表す方法です。毎回時間関数そのものを持ち歩く代わりに、複素振幅で計算します。

たとえば、電源が

v(t)=Vmcos(omegat+phi)v(t) = V_m \\cos(\\omega t + \\phi)

と書かれているとき、これは大きさと角度を持つフェーザで表せます。数値としての大きさは、最大値を使うか実効値を使うかで変わりますが、同じ流儀で統一している限り、位相関係は変わりません。

この「統一する」というルールは重要です。1つの計算の中で最大値と実効値を混ぜてはいけません。

インピーダンスとフェーザで計算が簡単になる理由

すべてをフェーザ形式にすると、オームの法則は同じ形のまま使えます。

tildeV=tildeIZ\\tilde{V} = \\tilde{I} Z

キルヒホッフの電圧則や電流則も、考え方は変わりません。違うのは、電圧・電流・インピーダンスが複素量になることです。そのため、実部と虚部の両方を考えて加える必要があります。

このため、フェーザ解析はフィルタ、電力回路、基本的なRLC回路の問題でとても便利です。時間的にずれた正弦波を、直接組み合わせられる量に変えてくれます。

計算例:直列RC回路

直列RC回路が次の値を持つとします。

R=100OmegaR = 100\\ \\Omega C=100mumathrmFC = 100\\ \\mu\\mathrm{F} f=50mathrmHzf = 50\\ \\mathrm{Hz}

また、電源フェーザは

\\tilde{V} = 10\\angle 0^\\circ\\ \\mathrm{V}

で、実効値を使うものとします。電流フェーザを求めましょう。

まず角周波数を求めます。

omega=2pif=2pi(50)approx314mathrmrad/s\\omega = 2\\pi f = 2\\pi(50) \\approx 314\\ \\mathrm{rad/s}

次に、コンデンサのインピーダンスを求めます。

ZC=fracjomegaC=fracj314(100times106)approxj31.8OmegaZ_C = -\\frac{j}{\\omega C} = -\\frac{j}{314(100 \\times 10^{-6})} \\approx -j31.8\\ \\Omega

次に、直列のインピーダンスを足します。

Z=R+ZC=100j31.8OmegaZ = R + Z_C = 100 - j31.8\\ \\Omega

この結果を大きさと偏角に直すと、

Z=sqrt{1002+31.82}approx104.9Omega|Z| = \\sqrt\{100^2 + 31.8^2\} \\approx 104.9\\ \\Omega

位相は

\\angle Z = \\tan^{-1}\\left(\\frac{-31.8}{100}\\right) \\approx -17.7^\\circ

です。

ここでフェーザ形式のオームの法則を使います。

tildeI=fractildeVZ\\tilde{I} = \\frac{\\tilde{V}}{Z}

電流の大きさは

tilde{I}=frac{10}{104.9}approx0.095mathrm{A}|\\tilde\{I\}| = \\frac\{10\}\{104.9\} \\approx 0.095\\ \\mathrm\{A\}

位相は

\\angle \\tilde{I} = 0^\\circ - (-17.7^\\circ) = 17.7^\\circ

となります。

したがって、

\\tilde{I} \\approx 0.095\\angle 17.7^\\circ\\ \\mathrm{A}

です。電流は電源電圧より約 17.7^\\circ 進んでいます。これは物理的なイメージとも一致します。容量性の性質を持つ回路では、電流が電圧より進みます。

交流回路解析でよくあるミス

条件に合わない場面でこの方法を使う

フェーザ解析は、一定周波数の正弦波定常状態に対する方法です。回路がスイッチング中だったり、立ち上がり途中だったり、非正弦波で駆動されていたりする場合、これだけでは不十分です。

リアクタンスを普通の正の抵抗のように足してしまう

コイル成分とコンデンサ成分は、虚数方向で符号を持ちます。その符号を落とすと、位相も電流も間違って予測してしまいます。

最大値と実効値を混ぜる

どちらの流儀でも計算できますが、1つの計算では一貫して同じ流儀を使わなければなりません。

インピーダンスが複素数であることを忘れる

交流解析では、素子の大きさだけを足してよいとは限りません。まず複素インピーダンスとして足し合わせ、その後で大きさを求める必要があります。

インピーダンスとフェーザはどこで使われるか

この考え方は、電力系統、フィルタ設計、共振の問題、信号処理、そして正弦波応答が重要な電子回路で広く使われます。最終的なシステムがもっと複雑であっても、インピーダンスとフェーザは、ふるまいを理解するための最初の明快なモデルになることが多いです。

似た問題に挑戦してみよう

例題を自分で少し変えて、RR を固定したまま周波数を2倍にしてみてください。ZC=j/(omegaC)Z_C = -j/(\\omega C) なので、コンデンサのインピーダンスの大きさは小さくなり、電流の大きさは増え、位相角は 00^\circ に近づきます。

別の値でもう1つ試したいなら、GPAI Solver で同様のフェーザ問題を解いてみてください。

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