エンタルピーは、一定圧力で起こる多くの過程におけるエネルギー変化を追跡するために、化学で使われる量です。化学基礎の問題では、まず次の重要な近道を押さえます。圧力が一定で、重要な仕事が圧力‐体積仕事だけなら、エンタルピー変化は系に移動した熱に等しくなります。
これにより、符号をすばやく判断できます。 ならその過程は発熱的で、系は熱を放出します。 なら吸熱的で、系は熱を吸収します。
化学におけるエンタルピーの定義
エンタルピーは次のように定義されます。
ここで、 は内部エネルギー、 は圧力、 は体積です。エンタルピーは状態関数なので、どの経路を通ってそこに至ったかではなく、系の現在の状態だけで決まります。
実際には、化学者が気にするのは絶対値よりもエンタルピーの変化です。多くの問題では、反応、相変化、混合のような過程で何が起こるかを問うので、役に立つ量は です。
定圧で となる条件
は、最終状態と初期状態のエンタルピー差を表します。
圧力が一定のとき、値が負なら熱は系から出ていき、値が正なら熱は系に入ります。この符号の約束は、常に系の立場から見たものです。
近道としての は便利ですが、条件つきです。これは、圧力が一定で、圧力‐体積仕事だけを考えればよい標準的な化学の状況で成り立ちます。その条件を外れる場合、これを普遍的な熱の公式として扱ってはいけません。
発熱反応と吸熱反応:符号の読み方
最も手早い判定法は、 の符号を見ることです。
- :発熱的。系は周囲へ熱を放出する
- :吸熱的。系は周囲から熱を吸収する
燃焼は代表的な発熱過程です。氷が融解するのは代表的な吸熱過程です。これらの名称は、言葉だけを暗記するよりも、熱の流れと結びつけて覚えると理解しやすくなります。
の符号だけでは、その過程が速いかどうかはわかりません。反応速度は、エンタルピー変化だけでなく、反応速度論や活性化エネルギーに依存します。
計算例:氷の融解
、 で の氷が融解するとします。水のモル融解エンタルピーはおよそ
です。
与えられた物質量に対して、
となります。
結果は正なので、融解は吸熱的です。この条件では、系は周囲から の熱を吸収します。
この例が役立つのは、符号が物理的なイメージと一致するからです。相変化温度での融解では、吸収されたエネルギーは試料の温度を上げるのではなく、状態を変えることに使われます。
エンタルピーの問題でよくある間違い
条件を確認せずに を使う
という近道は、熱の普遍的な定義ではありません。これは標準的な化学の設定で使う、定圧での関係式です。
系と周囲を取り違える
反応が自分にとって熱く感じられるなら、周囲は熱を受け取っています。つまり通常は、系が熱を放出しているので、系に対する は負です。
エンタルピーと活性化エネルギーを混同する
エンタルピー変化は初期状態と最終状態を比較する量です。活性化エネルギーは、反応段階が起こるために越えなければならない障壁です。これらはエネルギー図の別の部分を表しています。
発熱的なら自発的だと思い込む
必ずしもそうではありません。エンタルピーは重要ですが、一定温度・一定圧力での自発性は、 だけでなくギブズ自由エネルギーで決まります。
エンタルピーはどこで使われるか
エンタルピーは熱化学のさまざまな場面に現れます。
- 反応熱と熱量測定
- 融解、凝固、蒸発などの相変化
- ヘスの法則の計算
- 実験や工学の問題におけるエネルギー収支
問題が「定圧でどれだけ熱を吸収または放出するか」を尋ねているなら、まず確認すべき概念はたいていエンタルピーです。
類題に挑戦してみよう
今度は融解ではなく凝固について、同じ計算をしてみましょう。同じ条件では、逆過程なので大きさは同じで、符号だけが変わります。
この比較だけでも、発熱と吸熱はかなり覚えやすくなります。次の一歩としては、ヘスの法則 と比べて、複数の反応にまたがるエンタルピー変化がどのように足し合わされるかを見ると役立ちます。