結晶構造とは、固体中で粒子が三次元的に繰り返して並んだ配置のことです。BCC、FCC、HCPを比べるときのポイントはシンプルで、単位格子がどのような形か、その構造が最密充填かどうか、そして共有を考慮したときに1つの単位格子に何個の原子が属するかです。
BCCでは立方体の中心に原子が1つあり、FCCでは立方体の各面の中心に原子があります。HCPは六方層が積み重なった構造です。硬球モデルでは、FCCとHCPはどちらも最密充填ですが、BCCは最密充填ではありません。
単位格子とは?
単位格子とは、平行移動によって結晶全体を作り出す繰り返しの基本ブロックです。単独で浮かんでいる小さなかたまりではありません。配列のパターンを表すための便利な表現です。
ここが重要なのは、頂点・面・辺に描かれた原子は、ふつう隣の格子と共有されているからです。単位格子の図は、原子を私有している箱ではなく、配列のパターンを示しています。
BCC・FCC・HCPの比較
BCC: 体心立方格子
体心立方格子では、原子は立方体の8つの頂点にあり、さらに立方体の中心にも1つあります。
BCCは、条件が合えばいくつかの金属で見られます。最密充填構造よりも空間に余裕があるため、FCCやHCPほど密に球を詰めることはできません。
FCC: 面心立方格子
面心立方格子では、原子は8つの頂点と6つの面の中心にあります。
FCCは硬球モデルでは最密充填です。その最密充填層は、 という積層順序に従います。
HCP: 六方最密充填構造
HCPも最密充填構造ですが、積層順序が異なります。 ではなく、 の並びになります。
したがって、FCCとHCPは、繰り返し単位の形が同じでなくても、理想的には同じ充填効率と同じ配位数をもつことがあります。
早見比較表
| Structure | Unit-cell picture | Close-packed? | Typical coordination number |
|---|---|---|---|
| BCC | corners + 1 body center | no | 8 |
| FCC | corners + 6 face centers | yes | 12 |
| HCP | hexagonal layered cell | yes | 12 |
化学の初学者向けの問題なら、多くの場合この表だけで3つの構造をすばやく見分けられます。
例題:FCCの単位格子には原子が何個ある?
FCCは、原子の共有がはっきり分かるので、最初の例として最適です。
FCCの単位格子に含まれるのは次の原子です。
- 個の頂点原子
- 個の面心原子
ただし、これらの原子は共有されています。
各頂点原子は 個の隣接する単位格子で共有されるので、頂点からの寄与は
各面心原子は 個の単位格子で共有されるので、面からの寄与は
したがって、1つのFCC単位格子に含まれる原子の総数は
よくある間違いは、図に描かれた原子をすべて箱の中に完全に入っているものとして数えてしまうことです。実際には多くの原子が共有されているので、それでは大きく数えすぎてしまいます。
FCCとHCPがよく一緒に扱われる理由
FCCとHCPは、どちらも同じ大きさの球の最密充填配列なので、まとめて教えられることがよくあります。この理想化したモデルでは、どちらも原子充填率はおよそ です。
主な違いは密度ではありません。層の積み重なり方です。FCCは 、HCPは をとります。
結晶構造の問題でよくあるミス
描かれた原子をそのまま数えてしまう
頂点原子や面心原子は隣の格子と共有されています。単位格子の図は、原子の総数をそのまま示しているわけではありません。
BCCを最密充填と呼んでしまう
BCCは重要な立方晶構造ですが、FCCやHCPのような最密充填構造ではありません。
FCCとHCPはどちらも密だから同じだと考える
FCCとHCPはどちらも最密充填ですが、同じ構造ではありません。最も分かりやすい見分け方は積層順序です。
単位格子の形と結晶全体を混同する
単位格子はあくまで繰り返しの基本ブロックです。実際の結晶は、そのブロックが三次元的に大きく繰り返されたものです。
結晶構造が重要になる場面
結晶構造は、固体によって密度、拡散、力学的性質が異なる理由を説明するのに役立ちます。化学や材料科学では、原子配列とバルク特性を結びつける主要な考え方の1つです。
金属では、構造によって原子面がどのようにすべり合えるかが変わります。だからこそ、どれも原子が固体中に詰まってできているのに、金属ごとに性質が異なることがあります。
BCC・FCC・HCPの覚え方
それぞれに1つずつイメージを結びつけると覚えやすくなります。
- BCC: 中心に原子がある立方体
- FCC: 面に原子がある立方体
- HCP: と積み重なる六方層
次のステップとしては、BCCでも同じ数え方を自分で試してみるのがおすすめです。原子の共有が理解できると、単位格子の問題はぐっと読みやすくなります。