エネルギー保存則とは、孤立系の全エネルギーが一定に保たれるという意味です。エネルギーは物体の間を移動したり別の形に変わったりしますが、何もないところから生まれたり、完全に消えたりはしません。
記号で表すと、基本的な考え方は
または、同じ系の異なる2つの時刻について
となります。
ただし、これはすべての種類のエネルギーがそれぞれ単独で一定という意味ではありません。与えられた条件のもとで、あなたが選んだ系全体の合計が一定だという意味です。
エネルギー保存則が重要な理由
いちばん手早い考え方は、エネルギーの収支として見ることです。系にエネルギーの出入りがなければ、ある部分が減った分だけ、別の部分が同じだけ増えなければなりません。
基礎的な物理の問題では、エネルギーはよく次の間で移り変わります。
- 運動エネルギー
- 重力による位置エネルギー
- 弾性位置エネルギー
- 熱エネルギー
たとえば、物体が落下すると、重力による位置エネルギーは減少し、運動エネルギーは増加します。空気抵抗が十分小さく無視できるなら、この変化は力学的エネルギーの内部での移り変わりとしてモデル化されることが多いです。
単純なエネルギー方程式が使えるとき
完全な保存則が成り立つのは孤立系です。学校の力学では、よく使われる近道として力学的エネルギー保存があります。
この短い式が有効なのは、注目するエネルギー変化が運動エネルギー と位置エネルギー の間だけである場合です。たとえば、重力による位置エネルギーや弾性位置エネルギーがそれに当たります。また、摩擦や空気抵抗のような散逸効果が無視できるか、別に考慮されている必要があります。
摩擦が重要なら、全エネルギーは依然として保存されますが、力学的エネルギーの一部は熱エネルギーに変換されます。その場合は、その移り変わりを含めたエネルギー収支を書くほうが安全です。
計算例:高さから落としたボール
質量 のボールを、高さ から静かに落とすとします。空気抵抗は無視します。地面に当たる直前の速さはどれくらいでしょうか。
最初の位置では
地表付近で を使うと、
衝突直前では、地面を重力による位置エネルギーの基準 とすると
力学的エネルギー保存を使うと、
大事なのは数値だけではありません。この例は、なぜエネルギー保存則が便利なのかを示しています。毎瞬間の加速度を追わなくても、最終的な速さを求められるからです。
エネルギー保存でよくある間違い
- 「エネルギーが保存される」と聞いて、運動エネルギーが一定だと思ってしまうこと。通常、一定なのは全体の和であり、それぞれの成分ではありません。
- 摩擦や空気抵抗が重要なのに、熱に変わるエネルギーを考慮せずに を使ってしまうこと。
- 保存則は系の定義に依存することを忘れること。エネルギーが系の境界を越えるなら、その系の内部エネルギーだけを見ると変化してよい場合があります。
- エネルギー保存と力学的エネルギー保存を混同すること。全エネルギーが保存されていても、力学的エネルギーは減少することがあります。
エネルギー保存則はどこで使われるか
エネルギー保存則は、さまざまな状況を1つの考え方で結びつけられるため、物理全体で使われます。初学者向けの問題では、特に次のような場面でよく登場します。
- 物体の落下や投げ上げ
- 振り子やジェットコースターのような運動
- ばねと振動
- 衝突と熱による損失
- より広い意味での回路、波動、熱力学
力や加速度を一つひとつ追うのが面倒なとき、エネルギー保存則はしばしば最も速い方法になります。
式を使う前の簡単な確認
エネルギーの式を使う前に、次の2つを自分に問いかけてください。
- どの系を選ぶのか。
- この状況では、どの種類のエネルギーを含める必要があるのか。
この習慣で、ほとんどのミスを防げます。こうした選択がはっきりすると、エネルギー保存則は暗記する公式というより、物理のつじつまを合わせるための整理の道具として見えてきます。
似た問題に挑戦してみよう
同じ落下するボールの例で、高さを に変えてみましょう。まず予想してください。高さが4倍になると、速さも4倍になるでしょうか。それとも2倍にしかならないでしょうか。そのあと実際に計算して比べてみてください。