背理法は、ある主張の反対を仮定し、その仮定から不可能な結論が出ることを示して主張を証明する方法です。論理が正しく、得られた矛盾が本物なら、元の主張は真でなければなりません。
この方法は、否定を仮定すると具体的に扱える形になるときに特に有効です。定番の例が、 が無理数であることの証明です。これを有理数だと仮定すると、分数の形に書けるので、その結果を順に追えます。
背理法のしくみ
証明したい命題を とします。
背理法では、まず が偽であると仮定します。そこから論理を進めて、たとえば次のような矛盾に到達します。
あるいは、既知の定義に反する結論や、前の段階と同時には成り立てない主張に行き着きます。
その時点で、 の否定は正しくありえないので、 は真でなければなりません。
大事なのは、その矛盾が正しい推論と受け入れられた事実から出ていることです。単に「変に見える」だけでは不十分です。使っている定義や定理のもとで、本当に不可能でなければなりません。
背理法を使う場面
背理法は、主張の反対を仮定すると構造がはっきりする場合に特に向いています。これは数論、不可能性の証明、存在に関する一部の問題でよく起こります。
たとえば、ある数が無理数であることを示したいなら、それを有理数だと仮定すると分数の形が得られます。この追加の構造によって、直接証明よりも矛盾を見つけやすくなることがよくあります。
一方で、短い直接証明がすでにあるなら、背理法はあまり有利ではありません。背理法は正当な方法ですが、議論を必要以上に長くするのではなく、むしろ明確にするために使うべきです。
例題:なぜ は無理数なのか
背理法の古典的な例として、 が無理数であることの証明があります。
まず反対を仮定します。
これが真なら、 は次のように書けます。
ここで と は整数、 で、この分数は既約分数だとします。
両辺を2乗すると、
したがって
これは が偶数であることを意味します。すると 自身も偶数です。なぜなら、奇数の2乗は奇数だからです。よって、ある整数 を使って
と書けます。
これを に代入すると、
すると今度は も偶数なので、 も偶数です。
しかし、これでは も も偶数になってしまいます。つまり両方とも で割り切れることになり、 が既約分数だという仮定に反します。
したがって、最初の仮定は偽です。ゆえに は無理数です。
なぜこの矛盾で決着がつくのか
この矛盾は、単に「何かおかしい」という話ではありません。内容ははっきりしています。
- 仮定では、 は既約分数です。
- 代数計算から、 も も偶数でなければならないと分かります。
- 分子と分母がともに で割り切れる分数は、既約分数ではありえません。
この直接的な衝突こそが矛盾です。
背理法でよくあるミス
よくあるミスの1つは、反対の仮定があいまいなことです。必要なのは命題の正確な否定であって、似ているだけの別の文ではありません。
もう1つのミスは、誤った代数計算のせいで矛盾に達してしまうことです。その場合、示されたのは元の主張ではなく、計算が間違っていたということだけです。
3つ目のミスは、何と矛盾したのかを明示しないことです。よい証明では、偶奇の性質、定義、最小性の条件、すでに証明済みの定理など、どの事実と衝突したのかをはっきり示します。
また、「これは矛盾である」という言い方で弱い推論を隠してしまうこともよくあります。どの事実が破れたのかを正確に指摘できないなら、その証明は不完全である可能性が高いです。
背理法のシンプルな型
初学者向けの多くの証明では、流れは次のようになります。
- 命題が偽だと仮定する。
- その仮定を具体的な形に書き直す。
- その結果を一歩ずつ追う。
- 既知の事実と矛盾するところまで進める。
- 最初の仮定は偽だったので、元の命題は真だと結論する。
2番目の段階が弱いと、証明全体もぼんやりしがちです。強い背理法の証明は、否定をとても具体的な形に落とし込むところから生まれることが多いです。
似た背理法を試してみよう
「最小の正の有理数は存在しない」という主張を考えてみましょう。存在すると仮定してそれを とおき、 がどうなるかを考えてみてください。似た証明を一歩ずつ確認したいなら、GPAI Solver で自分なりの証明を書き、目指す矛盾と各主張を比べてみましょう。