電気陰性度とは、結合中で共有されている電子を原子がどれだけ強く引き寄せるかを表す相対的な尺度です。ポーリング尺度では、値が大きいほど結合電子を引く力が強いことを意味します。
これを使うと、結合の極性をすばやく予測できます。結合した2つの原子が共有電子をほぼ同じ強さで引くなら、その結合は無極性共有結合に近くなります。一方の原子がはるかに強く引くなら、その結合は極性をもちます。差が非常に大きい場合は、イオン結合性がかなり強くなることもあります。
ポーリング尺度が実際に示していること
ポーリング尺度は相対尺度です。電子の数を数えるものではなく、原子の電荷そのものを表すものでもありません。主な役割は、結合している原子同士を比較することです。
たとえば、フッ素は電気陰性度が最も高い元素の1つなので、結合電子を強く引き寄せる傾向があります。周期表の左側にある多くの金属は値が低く、共有電子を引く力もそれほど強くありません。
実用的な考え方は単純です。原子 と の結合では、それぞれの電気陰性度を比べます。差が大きいほど、電子の共有は不均等になりやすいと考えられます。
周期表での傾向
電気陰性度は、一般に同じ周期では左から右へ行くほど大きくなり、同じ族では上から下へ行くほど小さくなります。
典型的には次のように考えます。
- 同じ周期では、原子は結合電子をより強く引き寄せる傾向がある
- 同じ族では、原子が大きくなるほど結合電子対を引き寄せる力は弱くなることが多い
これは大まかな傾向であり、すべての元素やすべての状況に厳密に当てはまる法則ではありません。初学者向けの化学では、標準状態で通常の結合をつくらないものが多いため、希ガスは単純な電気陰性度の表から省かれることがあります。
例題:なぜ H-Cl 結合は極性をもつのか
水素のポーリング電気陰性度は約 、塩素は約 です。差は
となります。
この差は、電子の共有が明らかに不均等であることを示しているので、H-Cl 結合は極性共有結合です。
共有電子対は塩素側により強く引き寄せられるため、塩素は部分的な負電荷 を帯び、水素は部分的な正電荷 を帯びます。
この例は、電気陰性度の主な使い方を示しています。これは塩素が電子を完全に奪うという意味ではありません。しかし、結合のどちら側に電子密度がより多いかは示してくれます。
電気陰性度がよく予測できること
電気陰性度は、結合の極性を予測したり、分子内のどこに部分電荷が現れやすいかを見積もったりするのに役立ちます。また、分子間力、酸塩基の傾向、反応性の大まかな傾向を考えるときにも有用です。
ただし、あらゆる化学現象を説明できる完全なルールではありません。分子の形、共鳴、形式電荷、反応条件なども重要です。電気陰性度差がはっきりある結合は極性をもっていても、結合双極子が対称性によって打ち消し合えば、分子全体としては無極性になることがあります。
電気陰性度でよくある間違い
電気陰性度差を厳密な境界値だと考える
教科書では、無極性共有結合・極性共有結合・イオン結合についておおよその範囲が示されることがあります。これらは便利な目安ですが、普遍的な法則ではありません。境界的な場合には文脈が必要です。
他の性質と混同する
電気陰性度、イオン化エネルギー、電子親和力はどれも電子に関係しますが、同じ性質ではありません。電気陰性度は、あくまで結合中の共有電子を引きつける強さに関する量です。
2原子を比べずに1つの値だけを見る
電気陰性度の値が1つだけあっても十分ではありません。結合の極性は、結合している2つの原子の比較で決まります。
電気陰性度が特に役立つ場面
化学者は、次のようなことを考えるときに電気陰性度を使います。
- 結合が無極性か極性かを予測する
- 結合中でどちらの原子が になりやすいかを見分ける
- その結合が共有結合性とイオン結合性のどちらをより強くもつかを見積もる
- 周期表の傾向を実際の結合のふるまいと結びつける
似た結合で比べてみよう
、、 で自分でも比べてみましょう。まず電気陰性度差の大きい順に並べ、そのあとで、どれが無極性に最も近いか、どれが明らかな極性共有結合か、どれが最も強いイオン結合性をもつかを考えてみてください。この比較を1回するだけでも、考え方がかなり定着します。