ニュートンの第一法則は、物体に働く外力の合力が 0 なら、その物体の速度は一定のままだと述べます。つまり、物体は静止し続けるか、一定の速さで一直線に動き続けます。
この記述が成り立つのは慣性系であり、これは加速していない基準系のことです。この法則は慣性の法則とも呼ばれます。慣性とは、物質が速度の変化に逆らう性質だからです。
ニュートンの第一法則を一行で
慣性系では、
ここで重要なのは "constant" という言葉です。速度一定には、速度が 0 の場合、つまり静止も含まれますし、一定の速さでの等速直線運動も含まれます。
慣性とは何かをやさしく言うと
「動いている物体はそのまま動き続けたがる」と言われることがあります。これは近い表現ですが、十分ではありません。より正確には、物体は外力の合力が働かない限り速度を変えません。
速度には速さだけでなく向きも含まれます。したがって、速さが同じでも向きが変われば、それは速度の変化です。向きが変わるなら、外力の合力は 0 ではありません。
例題:なめらかな氷の上を滑るパック
ホッケーのパックがすでに東向きに で滑っているとします。スティックが離れたあと、次の数秒間は摩擦を無視できるほど氷が十分になめらかだと考えます。
すると外力の合力はおよそ 0 なので、ニュートンの第一法則から、パックは東向きに約 のまま一直線に動き続けると予測されます。
もしパックの速さが落ちるなら、それは外力の合力が実際には 0 でなかったことを示します。実際の氷上では、摩擦や空気抵抗によって速さは少しずつ下がることが多いので、速度一定という予測はその近似がどれだけよいかに依存します。
ここで身につけたい大事な習慣は、まず外力の合力が 0 かどうかを考えることです。0 なら速度一定を予想します。速度の大きさや向きが変わるなら、外力の合力は 0 ではありえません。
ニュートンの第一法則でよくある間違い
- 物体を等速で動かし続けるには力が必要だと考えること。必要なのは速度を変えるための合力であって、保つための力ではありません。
- 「力が 0」と「動いていない」を同じだと考えること。外力の合力が 0 でも、一定の速さで動いていることがあります。
- 曲がることも速度の変化だと忘れること。円運動は向きが変わり続けるので、ニュートンの第一法則の例ではありません。
- 慣性を押す力や引く力のように考えること。慣性は物質の性質であり、追加の力ではありません。
ニュートンの第一法則はいつ使うか
ニュートンの第一法則は、力の分析の出発点です。何かを計算する前に、その運動が外力の合力 0 を示しているのか、それとも 0 でない合力を示しているのかを考えます。
また、シートベルトが重要な理由の説明にも使えます。車が急に止まると、体はそれまでの速度を保とうとします。その運動を安全に変える外力を与えるのがベルトです。
初学者向けの物理では、この法則は単純なモデルを正当化するためにも使われます。たとえば空気抵抗を無視するなら、水平方向の投射運動は等速運動として扱われることがよくあります。これは水平方向の外力の合力を 0 とみなすからです。
似た状況で試してみよう
身近な場面を 1 つ選んで、自分でも考えてみましょう。たとえば机の上で静止している本、打たれたあとに滑るパック、車がブレーキをかけたときに前につんのめる乗客などです。最初の問いは 1 つだけです。外力の合力は 0 か。これを確かめるだけで、ニュートンの第一法則をそのまま使えるか、それとも次にニュートンの第二法則が必要かがたいてい分かります。