位相空間論は、正確な距離ではなく、開集合と連続性を使って空間を調べる数学の分野です。位相の基本を学ぶなら、最短の入り口はこうです。どの部分集合を開集合とするかを決め、その選び方から連続性を定義します。
だからこそ位相空間論では、長さ・角度・座標ではなく、局所的なふるまいによって空間を比べることができます。
位相空間とは何か
を集合とします。 上の位相とは、 の部分集合族 であって、各要素を開集合と呼び、次を満たすものです。
- と は に属する。
- に属する集合の任意和は、再び に属する。
- に属する集合の有限個の共通部分は、再び に属する。
組 を位相空間といいます。
この定義が抽象的なのは意図的です。どの集合が開であるかさえ分かれば、距離の公式を一切書かなくても、連続性・近傍・閉集合を定義できます。
なぜ開集合が重要なのか
開集合は、ある点のまわりに「少し動ける余地」があるとはどういうことかを表します。 の通常の位相では、 のような開区間は開集合です。なぜなら、その中のどの点のまわりにも、なお の中に収まるより小さな区間を取れるからです。
この局所的な考え方こそが位相の中心です。ある集合が開であるとは、その各点が、その集合の中で少しの余裕をもって含まれていることを意味します。
また、開であるかどうかは位相に依存します。同じ部分集合でも、ある位相では開であり、別の位相では開でないことがあります。
開集合から定まる他の基本概念
近傍
ある点の近傍とは、その点のまわりの開集合を含む任意の集合のことです。これは、距離を使わずに局所的な近さを表す位相空間論の言い方です。
閉集合
ある集合が閉であるとは、その補集合が開であることです。実数直線のような身近な空間では、閉集合はしばしば境界を含みますが、それ自体が定義ではありません。
連続性
と を位相空間とします。関数 が連続であるとは、 の任意の開集合 に対して、逆像 が で開であることです。
これは 上では微積分での通常の連続の考え方と一致しますが、距離が主な構造でない空間でもそのまま使えます。
同相写像
同相写像とは、全単射であり、しかも連続で逆写像も連続である関数のことです。2つの空間が同相なら、位相空間論ではそれらは位相的な意味で同じ形をしているとみなします。
ここで重要なのは、両方向の連続性が必要だということです。単なる全単射だけでは不十分です。
例題:通常の位相で が連続である理由
を
で定め、 には通常の位相を入れることにします。
終域の開集合 を取ります。その逆像は
であり、これは
と簡単になります。この集合は、開区間の和集合なので、 の通常の位相で開です。この例が示しているのは、確認すべき向きは「開集合の逆像」であるということです。 が開集合を開集合に送るかどうかを見るのではありません。
では、この条件は結局、極限を使う通常の連続の定義と一致します。
位相の基本でよくある間違い
「開」の意味はどこでも同じだと思う
そうではありません。開であるかどうかは、選んだ位相に対して定まります。
像と逆像を混同する
連続性で重要なのは、開集合の逆像が開であることです。関数に追加の条件を課さない限り、開集合の像が開である必要はありません。
位相を、言い換えただけの距離幾何だと考える
多くの位相空間はたしかに距離から作られますが、位相そのものはもっと一般的です。位相は、局所的なふるまいと連続性を語るのに必要な構造だけを残したものです。
すべての全単射が位相的な同値だと思う
同相写像であるためには、写像は全単射で、連続で、さらに逆写像も連続でなければなりません。
位相はどこで使われるのか
位相空間論は、現代解析における連続性・コンパクト性・連結性・収束の背景にある言葉を与えます。また、幾何学、力学系、微分方程式、そして大まかな形を調べるデータ解析にも現れます。
初学者にとっての実用的な意味はもっと単純です。位相は、連続性が座標や距離の公式に依存しない形で定義できる理由を説明してくれます。
類題に挑戦してみよう
同じ関数 を使い、今度は開集合 から始めてみましょう。 を求め、それが で開かどうかを確かめてください。
その次の一歩に進みたいなら、連続性の別の例も調べて、位相的な定義と微積分の極限による定義を比べてみましょう。