摩擦力は、面どうしの間の相対運動、または相対運動しようとする傾向を妨げる接触力です。物理では、面が張り付いているのか、すでに滑っているのかが重要です。なぜなら、それによって静止摩擦を使うか動摩擦を使うかが決まるからです。

初等物理で使う標準的な乾燥表面モデルでは、主な式は

fsμsNf_s \le \mu_s N

で表される静止摩擦と、

fk=μkNf_k = \mu_k N

で表される動摩擦です。ここで NN は垂直抗力、μs\mu_s は静止摩擦係数、μk\mu_k は動摩擦係数です。

物理における摩擦力の意味

摩擦力は接触面に平行にはたらきます。その向きは、相対運動、または摩擦がなければ起こるはずの運動に逆らいます。

この2つ目の考え方は重要です。箱が動いていなくても、静止摩擦がはたらいていることがあります。静止摩擦は、滑りを防ぐのに必要な大きさまで、最大値の範囲内で調整されます。

静止摩擦と動摩擦

静止摩擦

静止摩擦は、面どうしが互いに滑っていないときに使います。その大きさは、滑りを防ぐのに必要な値になり、最大値は次の通りです。

fs,max=μsNf_{s,\max} = \mu_s N

したがって、必要な摩擦力が μsN\mu_s N より小さければ、物体は静止したままでいられます。

動摩擦

動摩擦は、面どうしが滑り始めたあとにはたらきます。多くの初学者向け問題で使う単純な乾燥摩擦モデルでは、その大きさは

fk=μkNf_k = \mu_k N

です。

これは静止摩擦の最大値より小さいことが多く、物体を動かし始めるほうが、動かし続けるより大変に感じる理由の説明になります。

転がり摩擦と流体抵抗

日常会話ではこれらも「摩擦」とひとまとめにされがちですが、通常は別のモデルで扱います。転がり抵抗や抗力は、どんな条件でも成り立つ1つの普遍的な式に従うわけではありません。したがって、乾いた面の滑り摩擦と同じ規則に無理に当てはめないようにしましょう。

摩擦力の公式の例

10 kg10\ \mathrm{kg} の箱が水平な床の上を滑っているとします。動摩擦係数は μk=0.30\mu_k = 0.30 です。箱にはたらく摩擦力はどれくらいでしょうか。

水平な床で、他に鉛直方向の力がなければ、垂直抗力は箱の重さに等しくなります。

N=mg=10×9.8=98 NN = mg = 10 \times 9.8 = 98\ \mathrm{N}

次に、動摩擦の式を使います。

fk=μkN=0.30×98=29.4 Nf_k = \mu_k N = 0.30 \times 98 = 29.4\ \mathrm{N}

したがって、動摩擦力の大きさは 29.4 N29.4\ \mathrm{N} で、向きは滑る向きと反対です。

重要なのは手順です。まず摩擦の種類を見極め、次に垂直抗力を求め、そのあと対応する式を使います。

動き始めるときのほうが大変に感じる理由

重いソファを押すと、力を加えていても最初は動かないことがあります。これは、静止摩擦が押す力に合わせて大きさを調整しているためです。いったんソファが滑り始めると、抵抗する力が少し小さくなることが多く、そのため動かし続けるほうが動かし始めるより楽に感じられます。

この感覚は役に立ちますが、乾燥接触モデルに基づいた話です。実際の材料は変形したり、熱をもったり、振動したり、不規則にくっついたりするので、測定される摩擦がいつも完全に一定とは限りません。

よくある間違い

静止摩擦はいつも μsN\mu_s N に等しいと考える

それは静止摩擦の最大値にすぎません。実際の静止摩擦は、滑りを防ぐのに必要な大きさに応じて、0からその上限までのどの値にもなりえます。

NN を求める前に摩擦の式を使う

平らな面では NN は重さに等しいことが多いですが、常にそうとは限りません。斜面、追加の押す力、鉛直方向の張力などによって、垂直抗力は変わります。

向きが重要だと忘れる

摩擦力は力なので、向きがあります。接触面に沿って、相対運動、または相対運動しようとする向きと反対にはたらきます。

1つの係数がすべての状況で使えると思い込む

面の組み合わせが違えば係数も異なりますし、静止摩擦係数と動摩擦係数は通常同じではありません。

物理で摩擦力が現れる場面

摩擦力は、接触力が運動に影響するあらゆる場面で重要です。よくある例として、面上の物体、滑らずに歩くこと、ブレーキ、タイヤが路面をつかむこと、コンベヤベルト、斜面での力のつり合いの問題などがあります。

また、概念的にも重要です。摩擦は、理想化された力学の問題と、現実の物体のふるまいとの違いを生む要因になることが多いからです。

自分でも試してみよう

例を 15 kg15\ \mathrm{kg} の箱に変えたり、μk\mu_k の値を変えたりして、新しい垂直抗力を求めたあとで摩擦力を計算し直してみましょう。力のつり合いの問題を自分で試したいなら、GPAI Solver で似たケースを調べてみてください。

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