行列計算機は、加法、乗法、転置、行列式、場合によっては逆行列などの行列の演算を行うのに役立ちます。大事なのは、計算機は速くても、その演算自体が正しく定義されていなければならないという点です。
多くの学生にとって、まず確認すべきなのは行列のサイズです。加法では次元が一致している必要があり、乗法では内側の次元が一致している必要があります。逆行列や行列式は正方行列に対してのみ意味をもちます。
行列計算機でできること
行列とは、数を行と列に並べた長方形の配列です。サイズは行数×列数で表し、たとえば や のように書きます。
行列計算機が便利なのは、演算ごとに異なるルールがあるからです。
- 加法と減法では、同じサイズの行列が必要です。
- 乗法では、最初の行列の列数が次の行列の行数と等しくなければなりません。
- 行列式は正方行列に対してのみ定義されます。
- 逆行列が存在するのは、行列式が 0 でない正方行列だけです。
これらの条件のどれかが満たされない場合、正しい結果は数にはなりません。その形では演算が定義されていないだけです。
最も重要な行列の乗法のルール
行列の乗法が最も混乱しやすいのは、順序と次元の両方が重要だからです。行列 が 、行列 が なら、積 は定義され、結果のサイズは になります。
内側の次元が一致しなければ、乗法はできません。
このため、行列計算機では入力したとおりに両方の行列を指定する必要があります。順序を変えると答えが変わったり、乗法自体ができなくなったりします。
計算例:2つの 行列を掛ける
次を考えます。
どちらの行列も なので、積 は定義され、結果も になります。
の各行と の各列を掛けます。
したがって、
各成分は、 の1つの行と の1つの列から作られます。この行と列の内積を行列計算機は自動で計算してくれますが、そのパターンを理解しておくことで、結果が妥当かどうかを自分で確かめられます。
行列計算機でよくある間違い
次元のルールを無視する
サイズの異なる行列を足そうとしたり、内側の次元が一致しない行列を掛けようとしたりすることがよくあります。計算機が入力を受け付けなくても、本当の問題はその演算が定義されていないことです。
順序は関係ないと思い込む
行列の乗法では、 と はふつう同じではありません。両方の積が存在しても、答えが異なることがあります。片方だけが存在し、もう片方は存在しないこともあります。
存在しない逆行列を求める
逆行列には、正方行列であることと、行列式が 0 でないことが必要です。行列式が なら、その行列は特異行列なので、逆行列は存在しません。
行列計算機が役立つ場面
行列計算機は、線形代数、連立方程式、コンピュータグラフィックス、データ変換など、行と列の演算が何度も現れる場面で役立ちます。時間を節約できますが、どの演算がその問題に合っているかを理解したあとで使うと最も効果的です。
たとえば連立方程式を解くとき、行基本変形や逆行列を使う方法の確認に計算機は役立ちます。ただし、その結果が元の問題で何を意味するのかは自分で理解しておく必要があります。
似た例を試してみよう
自分で小さな行列を2つ用意して試してみましょう。 の行列を2つ掛けてから、順序を逆にして結果を比べてください。片方の積が変わったり、定義されなくなったりしたら、そこに行列計算機では隠せない本質があります。