化学式の書き方は、まずその物質が分子として書くものか、イオンの組合せとして書くものかを見分けるのが出発点です。分子なら1個の分子に入っている原子数を書き、イオン化合物なら全体の電荷が になる最も簡単な比を書きます。
この違いがわかると、下付き数字とかっこの意味も整理しやすくなります。逆にここをあいまいにしたまま覚えると、 や のような式でつまずきやすくなります。
化学式とは何か
化学式は、物質を元素記号と下付き数字で表したものです。たとえば は、水1分子の中に水素原子が2個、酸素原子が1個あることを示します。 も同じで、1個の分子の中身をそのまま表しています。
一方、 や のようなイオンからなる物質では、化学式は「電荷が打ち消し合う最簡比」を表します。こうした式は組成式と呼ばれることもありますが、学び始めではまず「イオン化合物の化学式」と考えて問題ありません。
書き方の基本ルール
1. 元素記号を正しく書く
最初の文字は大文字、2文字目があるときは小文字です。 はコバルト、 は一酸化炭素なので、大文字小文字を間違えると別の物質になります。
2. 下付き数字は直前の記号か、かっこ全体にかかる
の は水素だけにかかります。 の は 全体にかかるので、水酸化物イオンが2個あることを表します。
3. イオンからなる物質は、全体の電荷が0になるように書く
陽イオンと陰イオンの組合せで化学式を書くときは、全体の電荷が になることが条件です。比を決める前に、各イオンの電荷を確認するとミスが減ります。
4. 多原子イオンが2個以上あるときは、かっこを使う
や のように、複数の原子がまとまって1つのイオンになっているものを多原子イオンといいます。これが複数必要なときは、イオン全体をかっこでくくってから下付き数字を付けます。
例: 水酸化カルシウムはなぜ なのか
カルシウムイオンは 、水酸化物イオンは です。イオン化合物の化学式では、全体の電荷が になるように比を決めます。
カルシウムイオン1個の電荷は です。水酸化物イオン1個の電荷は なので、2個あれば合計で になります。
したがって、必要な比は です。だから化学式は になります。
ここで大事なのは、 が 全体にかかることです。もし と書くと、 が水素だけにかかる形になり、水酸化物イオンが2個あるという意味を正しく表せません。
よくある間違い
下付き数字と係数を同じものだと思う
の先頭の は、水分子が2個あることを表します。 の中の は、1個の水分子に水素が2個あることを表します。役割が違うので、反応式では特に混同しやすい点です。
分子の式とイオンの比を同じ感覚で読む
分子では、下付き数字はその分子そのものの中身です。イオン化合物では、まず電荷がつり合っているかを見る必要があります。この区別をしないと、なぜ になるのかが見えにくくなります。
多原子イオンなのにかっこを付けない
や のような式では、かっこがないと下付き数字のかかり方が変わります。多原子イオンをひとかたまりとして見る意識が必要です。
化学式は何に使うのか
化学式は、物質名を正確に示すためだけの記号ではありません。化学反応式を書くとき、モル質量を求めるとき、物質量を計算するときにも土台になります。
化学式を読み違えると、その後の計算や反応式の係数合わせまでずれやすくなります。だから最初に「分子の中身を書くのか」「電荷がつり合う比を書くのか」を区別できることが重要です。
次に試すこと
、、 を見て、それぞれが「分子の中身を表す式」なのか、「イオンの比を表す式」なのかを一言で説明してみてください。自分の言葉で言い分けられれば、化学式の書き方はかなり整理できています。