酸塩基滴定は、濃度がわかっている標準溶液を使って反応させることで、未知の酸または塩基の濃度を求める方法です。標準溶液を加えていき、反応が当量点に達すると、酸と塩基は化学反応式のモル比どおりにちょうど反応しています。

典型的な実験では、試料の体積を量り、ビュレットから滴定液を加え、終点を確認し、そのときの滴定液の体積から未知濃度を計算します。反応が 1:11{:}1 なら、簡便式 CaVa=CbVbC_aV_a = C_bV_b が使えます。1:11{:}1 でない場合は、先に必ず化学反応式を使わなければなりません。

なぜ酸塩基滴定で濃度が求められるのか

この方法が成り立つのは、中和反応が化学量論に従うからです。当量点では、反応した量は単に「だいたい同じ」ではありません。つり合った化学反応式に正確に一致します。

この条件は重要です。HCl と NaOH は 1:11{:}1 で反応しますが、硫酸と水酸化ナトリウムは 1:21{:}2 で反応します。

H2SO4+2NaOHNa2SO4+2H2O\mathrm{H_2SO_4} + 2\mathrm{NaOH} \rightarrow \mathrm{Na_2SO_4} + 2\mathrm{H_2O}

したがって、体積だけでは不十分です。反応式からモル比も必要になります。

酸塩基滴定の手順をステップごとに確認

学校や実験室で行う標準的な滴定は、通常次の手順で進めます。

  1. ビュレットを標準溶液ですすぎ、満たす。
  2. 未知溶液の一定体積をピペットでフラスコに取る。
  3. 適切な指示薬を数滴加えるか、pHプローブを使う。
  4. フラスコを振り混ぜながら滴定液を加え、終点付近では1滴ずつ加える。
  5. 終点が現れたときのビュレットの目盛りを記録する。
  6. 一致した滴定値が得られるまで繰り返す。

終点は、色の変化のように目で確認できる合図です。当量点は、化学量論で決まる点です。教科書の問題では同じものとして扱われることが多いですが、実際の実験では両者は近いだけで、完全に同一ではありません。

酸塩基滴定の公式と計算

最も安全な考え方は、まず物質量とつり合った化学反応式から始めることです。

nacida=nbaseb\frac{n_{\text{acid}}}{a} = \frac{n_{\text{base}}}{b}

ここで aabb は、つり合った化学反応式における量論係数です。

n=CVn = CV なので、これは次のようになります。

CacidVacida=CbaseVbaseb\frac{C_{\text{acid}}V_{\text{acid}}}{a} = \frac{C_{\text{base}}V_{\text{base}}}{b}

これが酸塩基滴定の一般式です。

簡便式

CaVa=CbVbC_aV_a = C_bV_b

が使えるのは、反応が 1:11{:}1 のときだけです。

計算例:未知の HCl 濃度を求める

25.0 mL25.0\ \mathrm{mL} の塩酸を、0.100 mol/L0.100\ \mathrm{mol/L} の水酸化ナトリウムで滴定したとします。NaOH を 18.4 mL18.4\ \mathrm{mL} 加えたところで終点に達しました。HCl の濃度を求めます。

まず反応式を書きます。

HCl+NaOHNaCl+H2O\mathrm{HCl} + \mathrm{NaOH} \rightarrow \mathrm{NaCl} + \mathrm{H_2O}

これは 1:11{:}1 の反応なので、当量点では HCl と NaOH の物質量は等しくなります。

加えた NaOH の物質量を求めます。

n(NaOH)=CV=0.100×0.0184=0.00184 moln(\mathrm{NaOH}) = CV = 0.100 \times 0.0184 = 0.00184\ \mathrm{mol}

したがって、HCl 試料に含まれていた物質量も

n(HCl)=0.00184 moln(\mathrm{HCl}) = 0.00184\ \mathrm{mol}

です。

次に、酸の体積を L にして割ります。

C(HCl)=0.001840.0250=0.0736 mol/LC(\mathrm{HCl}) = \frac{0.00184}{0.0250} = 0.0736\ \mathrm{mol/L}

したがって、酸の濃度は

0.0736 mol/L0.0736\ \mathrm{mol/L}

です。

この例から、ほとんどの滴定計算の考え方がわかります。既知の濃度と測定した体積から物質量を求め、その物質量から未知の濃度を求めます。

適切な指示薬の選び方

指示薬は、滴定曲線の急激に変化する部分で色が変わるものを選ぶべきです。変色域が急な pH 変化から大きく外れていると、終点を早すぎたり遅すぎたりして示すことがあります。

強酸-強塩基滴定では、当量点付近の pH 変化が大きいため、いくつかの一般的な指示薬が使えます。弱酸-強塩基滴定では、当量点が希薄水溶液中で通常 77 より大きくなるため、塩基性側で変色する指示薬のほうが適しています。強酸-弱塩基滴定では、酸性域で変色する指示薬のほうが合うことが多いです。

実用的なルールは単純です。試薬名だけでなく、滴定曲線に合わせて指示薬を選ぶことです。

酸塩基滴定でよくあるミス

CaVa=CbVbC_aV_a = C_bV_b を自動的に使ってしまう

この簡便式が成り立つのは 1:11{:}1 の反応だけです。係数が異なる場合は、先につり合った化学反応式を使います。

終点と当量点を混同する

終点は観測されるものです。当量点は化学量論で定まるものです。両者は近いはずですが、定義上は同じではありません。

終点付近で入れすぎる

必要な体積の大部分は、最後の数滴より前に安全に加えられます。終点付近では、1滴の違いが結果に影響することがあります。

体積の単位を混同する

n=CVn = CV で物質量を計算するなら、濃度は mol/L\mathrm{mol/L}、体積は L\mathrm{L} を使います。両辺で比の形を使う場合でも、体積の単位はそろっていなければなりません。

酸塩基滴定はいつ使われるか

酸塩基滴定は、未知濃度を求めるとき、溶液を標定するとき、試料の濃度を確認するときに使われます。また、中和という考え方を、測定できる実験手法に変える方法でもあります。

特に、中和反応が明確に定まり、終点をはっきり検出できる場合に有用です。

類題に挑戦してみよう

計算例で、NaOH の体積を 18.4 mL18.4\ \mathrm{mL} ではなく 22.0 mL22.0\ \mathrm{mL} に変えて、もう一度解いてみましょう。そのあと、H2SO4\mathrm{H_2SO_4} と NaOH のような 1:11{:}1 でない場合にも挑戦し、計算そのものより前に立式が変わることを確認してみてください。

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