酸塩基滴定は、濃度がわかっている標準溶液を使って反応させることで、未知の酸または塩基の濃度を求める方法です。標準溶液を加えていき、反応が当量点に達すると、酸と塩基は化学反応式のモル比どおりにちょうど反応しています。
典型的な実験では、試料の体積を量り、ビュレットから滴定液を加え、終点を確認し、そのときの滴定液の体積から未知濃度を計算します。反応が なら、簡便式 が使えます。 でない場合は、先に必ず化学反応式を使わなければなりません。
なぜ酸塩基滴定で濃度が求められるのか
この方法が成り立つのは、中和反応が化学量論に従うからです。当量点では、反応した量は単に「だいたい同じ」ではありません。つり合った化学反応式に正確に一致します。
この条件は重要です。HCl と NaOH は で反応しますが、硫酸と水酸化ナトリウムは で反応します。
したがって、体積だけでは不十分です。反応式からモル比も必要になります。
酸塩基滴定の手順をステップごとに確認
学校や実験室で行う標準的な滴定は、通常次の手順で進めます。
- ビュレットを標準溶液ですすぎ、満たす。
- 未知溶液の一定体積をピペットでフラスコに取る。
- 適切な指示薬を数滴加えるか、pHプローブを使う。
- フラスコを振り混ぜながら滴定液を加え、終点付近では1滴ずつ加える。
- 終点が現れたときのビュレットの目盛りを記録する。
- 一致した滴定値が得られるまで繰り返す。
終点は、色の変化のように目で確認できる合図です。当量点は、化学量論で決まる点です。教科書の問題では同じものとして扱われることが多いですが、実際の実験では両者は近いだけで、完全に同一ではありません。
酸塩基滴定の公式と計算
最も安全な考え方は、まず物質量とつり合った化学反応式から始めることです。
ここで と は、つり合った化学反応式における量論係数です。
なので、これは次のようになります。
これが酸塩基滴定の一般式です。
簡便式
が使えるのは、反応が のときだけです。
計算例:未知の HCl 濃度を求める
の塩酸を、 の水酸化ナトリウムで滴定したとします。NaOH を 加えたところで終点に達しました。HCl の濃度を求めます。
まず反応式を書きます。
これは の反応なので、当量点では HCl と NaOH の物質量は等しくなります。
加えた NaOH の物質量を求めます。
したがって、HCl 試料に含まれていた物質量も
です。
次に、酸の体積を L にして割ります。
したがって、酸の濃度は
です。
この例から、ほとんどの滴定計算の考え方がわかります。既知の濃度と測定した体積から物質量を求め、その物質量から未知の濃度を求めます。
適切な指示薬の選び方
指示薬は、滴定曲線の急激に変化する部分で色が変わるものを選ぶべきです。変色域が急な pH 変化から大きく外れていると、終点を早すぎたり遅すぎたりして示すことがあります。
強酸-強塩基滴定では、当量点付近の pH 変化が大きいため、いくつかの一般的な指示薬が使えます。弱酸-強塩基滴定では、当量点が希薄水溶液中で通常 より大きくなるため、塩基性側で変色する指示薬のほうが適しています。強酸-弱塩基滴定では、酸性域で変色する指示薬のほうが合うことが多いです。
実用的なルールは単純です。試薬名だけでなく、滴定曲線に合わせて指示薬を選ぶことです。
酸塩基滴定でよくあるミス
を自動的に使ってしまう
この簡便式が成り立つのは の反応だけです。係数が異なる場合は、先につり合った化学反応式を使います。
終点と当量点を混同する
終点は観測されるものです。当量点は化学量論で定まるものです。両者は近いはずですが、定義上は同じではありません。
終点付近で入れすぎる
必要な体積の大部分は、最後の数滴より前に安全に加えられます。終点付近では、1滴の違いが結果に影響することがあります。
体積の単位を混同する
で物質量を計算するなら、濃度は 、体積は を使います。両辺で比の形を使う場合でも、体積の単位はそろっていなければなりません。
酸塩基滴定はいつ使われるか
酸塩基滴定は、未知濃度を求めるとき、溶液を標定するとき、試料の濃度を確認するときに使われます。また、中和という考え方を、測定できる実験手法に変える方法でもあります。
特に、中和反応が明確に定まり、終点をはっきり検出できる場合に有用です。
類題に挑戦してみよう
計算例で、NaOH の体積を ではなく に変えて、もう一度解いてみましょう。そのあと、 と NaOH のような でない場合にも挑戦し、計算そのものより前に立式が変わることを確認してみてください。