DNA複製とは、細胞が分裂の前に自分のDNAをコピーするしくみです。基本の考え方はシンプルで、もとの2本鎖がほどけ、それぞれの鎖をもとに相補的な新しい鎖が合成され、最終的にDNA分子が1個から2個になります。
これは、新しくできる細胞が元の細胞と同じ遺伝情報を受け取るために重要です。複製がうまくいかないと、コピーされたDNAに変化が生じ、細胞のはたらきに影響することがあります。
DNA複製が半保存的複製と呼ばれる理由
DNA複製は半保存的複製と呼ばれます。新しくできたDNA分子のそれぞれが、1本の元の鎖と1本の新しく合成された鎖を含むからです。
ここが最も大切なポイントです。古い鎖が捨てられるわけではなく、細胞が鋳型なしで2本とも新しく作るわけでもありません。代わりに、塩基対の規則に従ってコピーが進みます。アデニンはチミンと、シトシンはグアニンと対になります。
DNA複製の主なステップ
複製は、二重らせんが開くところから始まります。DNAがほどかれてコピーされるY字型の部分を複製フォークといいます。
主なステップは次のとおりです。
- ヘリカーゼが2本の元の鎖を引き離す。
- プライマーゼが短いRNAプライマーを合成する。
- DNAポリメラーゼが伸長中の鎖に新しいDNAヌクレオチドを付加する。
- リガーゼがDNA断片の間の切れ目をつなぐ。
その後の過程を決める重要な条件が1つあります。DNAポリメラーゼは、鎖を から の方向にしか伸ばせません。2本の鋳型鎖は逆向きに並んでいるため、2本の新しい鎖は同じようには合成されません。
先行鎖と後続鎖の違い
先行鎖は、複製フォークが開くのに合わせて、より連続的に合成されます。
後続鎖は、岡崎フラグメントと呼ばれる短い断片として合成されます。これらの断片は、あとでつなぎ合わされます。
この違いは、どちらか一方の鎖のほうが重要だという意味ではありません。DNA合成が から の規則に従わなければならないために生じる違いです。
例題:相補鎖を作る
たとえば、露出した鋳型鎖の一部が次のように読めるとします。
これに対して合成される相補鎖は次のようになります。
この例は、2つの重要な考え方を示しています。1つ目は、新しい鎖はコピーしている鋳型鎖と同一ではなく、相補的であるということです。2つ目は、2本の鎖が逆向きに並んでいるため、複製は逆平行で進むということです。
新しい鎖を、二重らせん中でもともと対になっていた相手の鎖と比べると、塩基配列は一致します。だからこそ、それぞれの元の鎖が失われた相手側の鎖を再現する手がかりになれるのです。
DNA複製でよくある誤解
2本の新しい鎖はどちらも連続的に作られると思う
そうではありません。ある複製フォークでは、一方の新しい鎖はより連続的に合成され、もう一方は断片として組み立てられます。
DNAポリメラーゼは何もないところから合成を始めると思う
そうではありません。DNAポリメラーゼには、すでにある出発点が必要です。そのため、最初にRNAプライマーが必要になります。
相補的と同一を混同する
新しい鎖は鋳型に対して相補的です。同じ鋳型鎖をそのまま1文字ずつ写したものではありません。
複製は有糸分裂の直前にしか起こらないと思う
真核細胞では、DNA複製は有糸分裂や減数分裂の前の細胞周期S期に関連しています。原核生物でも複製は不可欠ですが、細胞周期のとらえ方は異なります。
DNA複製が重要になる場面
DNA複製は、細胞分裂、成長、組織修復、生殖の中心となるしくみです。また、突然変異、遺伝、ゲノムの安定性に関する多くの問題がDNAのコピーのされ方に依存するため、遺伝学、分子生物学、バイオテクノロジー、医学の基礎でもあります。
また、校正や修復のしくみがなぜ重要かを理解する助けにもなります。複製の精度は非常に高いですが完全ではないため、細胞はコピーの誤りを減らすための追加の仕組みを使っています。
類題に挑戦してみよう
短いDNA鋳型を使って、自分でもやってみましょう。まず 端と 端を示した1本の鎖を書き、次に相補鎖を作ります。そのうえで、複製フォークのどちら側で断片ごとの合成が必要になるかを考えてみましょう。